レイヤードが医療DXでクリニック経営お助け 診察15%短縮

医療機関向けシステム開発を手掛けるレイヤードが、クリニックの経営効率化に一役買っているようだ。患者の属性や症状に応じ質問内容を変えるデジタル問診票や電子カルテへの自動転記などで診療にかかる時間を短縮し、取引先は4000超に広がったという。高齢者向けの対話型生成AIの導入も進め、早期に1万件の導入をめざすとのことだ。

レイヤードは、1998年創業。創業当初はクリニック向けの電子掲示板事業を展開していたが、2017年に医療DX事業に参入した。売上高は年率30%程度のペースで伸ばしており、25年6月期の売上高は15億円程度を見込む。代表取締役社長の毛塚氏は「数年以内の新規株式公開をめざす」と意気込んでいるようだ。現在は医療インターフェイスの研究・実装を通じて、医療をわかりやすくする「共創する医療」を創造し、医療者と生活者の間で価値の矛盾を両立し、かかりつけ医のためのプロダクトを展開してる。
主な事業内容としては、医療機関向けのホームページ制作、WEB問診システムの提供、電子同意書の作成、電話自動応答システムの提供、 デジタルサイネージの提供を行ない、医療者と生活者の共通領域に機能する「医療インターフェイス」を研究・実装し、医療DXを推進している。

レイヤードが展開する「シムビュー」は、患者の属性や症状にあわせて質問事項が変化するウェブ問診システムだ。

従来は医師が面会してから聞いていた内容を事前に詳しく入力してもらうことで、すぐに診断や処置に取りかかれる。さらに入力した内容は専門用語に置き換えられて電子カルテに転記され、入力の手間も省けることで1回あたりの診察時間は15%ほど短縮される。
ビデオ通話機能も備え、有料プランの決済機能を活用すればオンライン診療にも使えるようだ。発熱外来では予約時点で新型コロナウイルスなど感染症の疑いがあると申告した患者にオンライン診療を希望する選択肢を表示し、問診から診療、決済まで一貫して対応できるという。

シムビューは2018年にサービスを開始。医療のデジタルトランスフォーメーションが求められた新型コロナ禍を機に注目を集め、眼科や内科などの保険診療クリニックを中心に約2000の医療機関が採用する主力事業に育ってきている。
レイヤードは、ほかにも予約システムの「ワクミー」や電話自動応答システム「アイバー」など、需要に応じ細かく導入できるシステムをラインアップしており、取引のある医療機関は全国で4000を超えているとのこと。

今後はITになじみのない高齢者でも利用できるよう、生成AIを活用した新たなシステムを開発する。同社が保有するデータを活用し、「おなかがズキズキと痛いです」「来週の早い段階に予約したいです」といった患者の発言をもとに問診や予約などを行い、25年にも実用化していきたいと述べる。
毛塚氏は、「医療従事者でなくてもできる予約などの業務を省人化する需要は底堅い」とみている。生成AIの活用などを通じて27年6月期には医療機関への導入件数を1万まで伸ばしたい考えだという。件費や材料費の負担が高まるなか、クリニックの経営効率化は急務となっているようだ。今後の医療機関の救世主になってくれることを期待したい。