「国内製造業の未来を見据えた出資戦略」Japan Activation Capitalがオムロン・タダノに資本参加

2025年7月7日に、投資会社「Japan Activation Capital(JAC)」が、日本を代表する製造業であるオムロン株式会社と株式会社タダノへの出資を発表した。JACは、スタートアップ支援だけでなく、既存産業の再活性化を視野に入れた独自の投資スタンスをとっており、今回の出資もその方針の延長線上に位置づけられるという。特に製造業領域において、次世代型のものづくりを推進する企業との連携を深める動きが加速している。
Japan Activation Capitalは、国内外のベンチャーキャピタル経験者らによって設立された独立系投資会社であり、日本の既存産業に対する再評価と再構築をテーマに投資活動を展開している。従来型のハンズオフ型投資にとどまらず、事業提携や新規事業の立ち上げ支援まで踏み込むスタイルが特徴で、近年は成熟産業のアップデートを志向した案件が目立つ。
今回出資を受けたオムロンは、制御機器やヘルスケア機器など多岐にわたる事業を展開しており、特に近年はAI・IoT技術を活用したスマートファクトリーの構築に注力している。一方のタダノは、クレーンを中心とした建設機械メーカーとして知られており、インフラ需要の拡大を背景に海外展開を進めるなど、堅実かつグローバルな経営を続けている。
オムロン株式会社は、1933年創業の京都発の老舗電機メーカー。産業用制御機器をはじめ、血圧計などのヘルスケア製品、自動改札機のような社会インフラ機器まで手がけており、その事業領域は極めて広い。AIやセンシング技術を活用したスマート製造の分野では国内外から高い評価を受けており、今後の製造業DXを牽引する存在として期待されている。
株式会社タダノは、1919年創業の香川県高松市に本社を置くクレーンメーカーであり、建設現場や災害復旧の場面で必要不可欠な機械を世界中に提供している。近年では欧米市場への展開を強化し、持続可能なインフラ整備への貢献を打ち出している。IoTを用いた稼働状況の可視化や遠隔保守の導入にも積極的で、建設機械の“スマート化”を進めている点が評価されている。
JACは今回の出資を通じて、両社との中長期的な連携を模索するとしており、具体的には技術革新領域での協業、次世代経営層とのネットワーク構築、さらには国内外スタートアップとの連携支援といった取り組みが視野に入っているという。これにより、伝統的製造業がスタートアップのダイナミズムを取り込み、より柔軟でスピーディーな企業体質への変革を進めることが期待される。
JACの代表コメントによると「国内製造業には依然として大きな潜在力があるが、経営と技術の両面においてリ・デザインが必要な局面にある。既存産業のリビルドを軸に据えた投資こそが、持続可能な産業構造の鍵になる」と述べている。
製造業は長らく日本経済を支えてきた根幹産業である一方、グローバル競争や後継者不足、技術の陳腐化といった課題に直面している。そうした中で、JACのような次世代型投資家による介入が、企業の変革を後押しする“触媒”となりうるのか。産業の基盤を変える投資のあり方に、今後も関心が集まりそうだ。