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株式会社ギフティが伝えるeギフト市場の最新動向とブランドのDX戦略|過去最高を更新するギフト市場の全貌

2025年11月、株式会社ギフティが主催するメディア説明会が開催された。「eギフト市場の動向とブランドが取り組むeギフトおよびDX戦略」をテーマに、ギフト市場の最新トレンドや各ブランドのデジタル活用事例が紹介された。

ギフト市場は過去最高を更新中

株式会社矢野経済研究所 コンシューマーマーケティングユニット ブランディング&イノベーションサービスグループ 部長/主席研究員の清水由起氏(以下、清水氏)によると、ギフト市場は2025年現在11兆3510億円に達し、コロナ前を超えて過去最高を更新し続けている。「消費財市場の中で、ギフトは堅調に推移している数少ない分野」と清水氏は語る。

市場の内訳を見ると、結婚式の引き出物やお葬式の御礼返しといった「フォーマルギフト」は減少傾向にある一方、感謝の気持ちを伝える「カジュアルギフト」が圧倒的に伸びている。「人と人とのコミュニケーションツールとしてのギフトの存在感がどんどん増している」(清水氏)。

特に注目すべきは、前年比120%前後で成長を続ける「eギフト」市場だ。元々は若者を中心に個人間でも利用されるケースが多かったが、法人がキャンペーンやノベルティで活用されるようになり、市場は拡大を続けている。

ギフティのeギフトプラットフォーム事業とは

株式会社ギフティは2010年に設立され、2025年で15周年を迎える。2011年にカジュアルギフトサービス「giftee」の提供を開始し、2014年からeギフトの発行・販売を管理する「eGift System」の提供を開始した。

同社代表取締役の太田睦氏(以下、太田氏)は、「eギフトを軸として、企業と街の間に様々なハブサービスを提供し、気持ちの循環を促進することで、より良い関係でつながった社会を作る」というビジョンを掲げる。

現在、274社がeギフトシステムを導入しており、コンビニやカフェといった小売・飲食業界だけでなく、ホテルやエンタメ、体験ギフトなど、カテゴリーが大きく広がっている。

多様化するコンテンツパートナーのニーズ

株式会社ギフティ第二事業本部Gift Creation副本部長の田渕恵理氏(以下、田渕氏)によると、2019年を境にコンテンツパートナー(CP)のニーズが多様化しているという。「当初はギフト需要の獲得が主な目的でしたが、現在はeギフト生成後の流通拡大や、eギフト以外のDX施策へのニーズが高まっています」

ギフティは「Giftify Everything,Circulate the Love」というビジョンのもと、「あらゆるものがギフトになる」という考え方でCPに伴走し、流通を最大化する方針を掲げている。

コンテンツ拡充の事例

京王プラザホテル

ホテル内の13店舗で利用できるギフトを電子化。従来は紙券を直接購入する必要があったが、電子化により24時間いつでも購入でき、購入後すぐに手元へ届くようになった。

IDOLCHAMP(アイドルチャンプ)

韓国の人気音楽番組と連動したアプリで利用できるeギフトを展開。推し活仲間同士でギフトを贈り合う新しい用途として注目されている。清水氏は「推し活ギフトは意味消費、時消費、エモ消費といった今の時代を表すトレンド」と分析する。

亀田製菓

オリジナルハッピーターンが作れるサービスをギフト化。指定の画像をアップロードすることで、パッケージに印字されたオリジナル商品を生成できる。「Z世代を中心に、カスタマイズ商品は非常に人気がある。自分の気持ちを乗せたギフトという傾向が強い」(清水氏)。

新たなギフトフォーマットの開発による流通拡大

株式会社ギフティは流通拡大のため、新たなギフトフォーマットの開発にも注力している。

2025年にリリースした「カタログギフトシステム」は、受け取った側が掲載商品の中から好きなものを選べる仕組みだ。ポイント制ではないため受け取った側へ金額が伝わらず、オリジナルカタログも生成できる。

利用例として、クラフトビール専門店「Otomoni」は、100種類以上のクラフトビールから受取人が選べるカタログギフトを展開。「好みがわからないから贈れない」という機会損失を防ぐことができる。

「SUBARU」もキャンペーンでオリジナルカタログギフトを活用。自社商品に親和性の高い商品だけを掲載し、自社が持つブランドの世界観を伝えている。

清水氏は「カタログギフトは最も進化を遂げているジャンル。特化型、デジタル化、カスタマイズと、ギフトを最適化する方向に進化している」と評価する。

また、フィジカル×デジタルが融合したギフトにも注目だ。

株式会社大和のブランド「Bloom365」では、アーティフィシャルフラワー(造花)とeギフトのQRコードをセットにした商品を展開し、「eギフトでも手渡ししたい」というニーズに応えている。

eギフトの流通先は拡大

BtoE(福利厚生)領域

「出前館」は配達員に対して感謝を伝えるギフトとして、ドリンク購入に使えるeギフトを提供。清水氏は「従業員の誕生日や母の日のサポートなど、BtoEでの法人ギフトのシーンが多様化している。コロナをきっかけに、コミュニケーションツールとしてのギフトの重要性が高まった」と分析する。

自治体(GtoC)領域

東京都17自治体が出産・子育て支援策に「giftee Box」を採用。自治体による支援ギフトは、子育て支援、医療従事者支援、防災支援など、さまざまな分野で活用が広がっている。

新規マーケットの開拓

株式会社メルカリとの協業では、メルカリの売上金でeギフトを購入できる「メルカリギフト」サービスを立ち上げた。「一見ギフトとは関連がないサービスでも、新たなマーケットを作り出していきたい」と田渕氏は話す。

「セルフギフト」新たなトレンドに、ギフティも2026年に参入

新たなトレンドとして「セルフギフト」にも注目が集まっているとのことだ。セルフギフトとは、自分を褒めたい、いたわりたい、癒したい、モチベートしたいなどの理由で自分自身に贈るギフトを指す。

韓国では、オフィスワーカーの80%以上が自分にギフトを贈った経験があり、32%が75~226ドルを支出する意向があるというデータもある。日本でもZ世代を中心に、自分へのご褒美を購入する傾向が強まっている。

清水氏は「大きな達成でなくても、自分の機嫌を取るためにちょっとしたギフトを買う頻度が上がっている。自分のための消費に慣れている世代と言える」と分析する。

ギフティは2026年からセルフギフト市場に本格参入する予定だ。田渕氏は「セルフギフトに親和性の高い商品の開拓、購入されやすい販売チャネルの開拓、そしてセルフギフトというカルチャーの醸成に取り組んでいく」と語る。

具体的には、週末の金曜夜に特別オファーを出すなど、タイミングを重視した施策を展開。ブランドと協力して還元キャンペーンを実施し、「ブランドからの応援」という意味合いを持たせることで、セルフギフトの購入を後押しする。

「セルフギフトを経験した人がSNSで発信し、それを見た人が同調する。この流れが文化醸成につながる」(田渕氏)。初年度は数億円規模の流通額を見込んでおり、メルカリギフトをはじめとする複数のチャネルでリリースを予定している。

いかがだっただろうか。ギフト市場は過去最高を更新し続けており、特にeギフト市場の成長が著しい。カジュアルギフトの増加、法人ギフトの多様化、自治体による活用拡大など、ギフトの用途とシーンは大きく広がっている。

ギフティは「Giftify Everything,Circulate the Love」というビジョンのもと、コンテンツの拡充、フォーマット開発、流通先の拡大、DXサポートという4つの施策を軸に、CPの流通最大化に取り組んでいる。カタログギフトの進化、フィジカルとデジタルの融合、新規マーケットの開拓など、イノベーティブな取り組みにより、ギフト市場の可能性はさらに広がっている。そして、セルフギフトという新たなトレンドは、ギフト市場の次なる成長領域として注目だ。

「気持ちの循環を促進することで、より良い関係でつながった社会を作る」というギフティのミッションは、eギフトというテクノロジーを通じて、着実に実現へと向かっている。