Googleがコア部門で早期退職制度を導入し生成AI時代に向けた組織再編を加速

2025年6月10日にGoogleは検索、広告、ナレッジ&情報などのコア部門において、社員を対象とした早期退職制度(ボランタリーバイアウト)の募集を開始した。これは、生成AIの進化を背景に進められている同社の組織再編の一環とされ、今後の事業構造をよりスリムかつ機動的に保つ狙いがあるという。
今回の制度は、対象となる従業員が自発的に退職を選択することで、一定の退職パッケージ(報酬や支援)を受け取れる仕組みとなっており、強制的なレイオフではない点が特徴だ。Googleはこれまでも市場の変化や新技術への対応を理由に、人員配置や部門再編を継続的に実施してきたが、ボランタリーベースでの退職募集はコア部門では異例の対応といえる。
Googleは近年、AI技術を中心に大規模な転換を進めており、特にGemini(旧Bard)などの生成AIサービスの強化を軸とした戦略的な方向転換が鮮明になっている。検索や広告といった主力分野でも、従来のアルゴリズム主導型から、生成AIを活用したパーソナライズ型の検索体験や広告配信へと舵を切りつつある。こうした動きに伴い、従来の業務プロセスや体制に対する見直しが求められており、今回の制度はその流れの一部と位置付けられているようだ。
一部報道によると、Google社内では検索チームやナレッジグラフチーム、広告商品開発チームなどが対象に含まれており、実際に数百名規模の人員が早期退職制度の検討対象となっている可能性があるという。なお、Googleは制度の詳細や退職者数の見通しについては現時点で公式には明らかにしていない。
Alphabet(Googleの親会社)は、2023年および2024年にかけて、世界的な景気後退や広告市場の変動を受けて複数回のレイオフを実施しており、今回のボランタリーバイアウトはその延長線上にあるものと見る向きもある。ただし、強制解雇とは異なり、自主的な選択による制度とすることで、社内外に対するインパクトを抑える狙いもあると考えられる。
同時に、AIによる業務自動化や情報取得の変化は、既存の職務範囲を根本から再定義する動きを加速させており、人員構成の再設計は今後も継続的に行われていく可能性が高い。企業としての柔軟性やスピード感を保つには、単なる人員削減ではなく、スキルセットの更新や役割設計そのものの刷新が求められている状況だ。
Googleは今回の取り組みによって、生成AI時代の中核企業としての競争力を維持・強化する姿勢を示した形となった。従来のインフラや組織構造に頼らない柔軟な意思決定と再編戦略が、同社の次なる成長フェーズにおいて鍵を握るとみられる。