建物の老朽化に、ドローン×最先端コーティングで挑む── “剥落防止くん”が切り拓く建物保全の未来

株式会社ジェブは、新サービス「剥落防止くん」を発表した。外壁タイルの剥落事故から人命を守り、建物の老朽化問題の解決に挑む、画期的なトータルソリューションだ。住宅・建物の外壁保全の新たな一手となる。
剥落事故と加速する老朽化
日本は地震大国であり、建物の耐震性・落下防止対策は常に社会的な課題だ。政府発表によれば、今後30年以内に南海トラフ地震が発生する確率は80%とされ、最悪のケースでは29万人以上の死者、235万棟の建物が全壊・焼失すると予測されている。また、2043年には築40年以上の高経年マンションが2023年比で3.4倍に急増するとみられる。
こうした中、管理不全や予算不足から外壁タイルの剥離・剥落事故が全国で相次ぎ、国土交通省調査でも1万1,305棟中8.3%で落下リスクが報告された。しかも、多くのリスクは表面化していない「見えない危険」だ。特に老朽マンション問題は、住民の高齢化・管理体制の脆弱化とともに悪化する一方で、社会全体での対策強化が求められている。
法改正とテクノロジーの進展:ドローン点検が可能に
従来、外壁タイルの状態診断は「打診調査」が主流だったが、足場設置の手間・高コスト・騒音リスク、長い工期が問題だった。なかなか調査そのものが実施されず、8割以上の建物で全面打診は未実施だった。
2022年、この現状を打破すべく、ドローンによる赤外線カメラ診断の法定点検が認可される。これにより、非接触・非破壊での素早い調査が実現し、高度な技術を駆使したリスクの可視化が可能になった。ドローン点検は足場不要・低コスト・短工期・高精度をすべて兼ね備えており、建物への負担や安全性面でも大きな前進となった。

新しい外壁保全サービス「剥落防止くん」
株式会社ジェブは創業29年(2025年6月現在)、フロアコーティング等の住居向けソリューションで成長してきた。
同社は売上19億円を記録するなど順調な成長の裏で、「コーティング技術でどう社会課題を解決できるか」という根本的な問いに向き合い、タイル剥落対策を「命を守る」ための新たな挑戦として、「剥落防止くん」を生み出し市場への導入に踏み切った。
「剥落防止くん」は、高性能ドローンを使った外壁診断と、剥落防止コーティング「タイルホールド工法」を組み合わせたワンストップサービスだ。
1. ドローン赤外線診断
高性能ドローンが外壁を空から赤外線撮影し、「浮き」などの劣化部位を可視化。タイルホールド工法を検討する場合、外壁診断は無料。経験豊富な自社スタッフが撮影から解析・レポート作成まで一貫して担当。精度・信頼性の高い診断を実現する。
2. タイル剥落防止コーティング「タイルホールド工法」
ポリウレア樹脂による強靭な透明塗膜を外壁全体にコーティング。外観を損なわず、建物を「見えないネット」で包み込む保護効果。高い防水性・耐候性をもち、20年相当の長寿命を誇る。アンカーピン工法等と比較し、外観維持・工期短縮・コスト削減・負担軽減など多くのメリット。
3. パッケージ提供と保証体制
診断・工事・保証を一貫してパッケージで提供。工事保証10年間。国交省認定の瑕疵担保保険にも対応可能。既に全国700件以上の施工実績。震度5強の地震でも施工済み部分は異常なしとのデータが示す高信頼性。

技術開発―“唯一無二”のポリウレア樹脂
剥落防止くんのコア技術である「タイルホールド工法」は、KFケミカル株式会社が独自開発したポリウレア樹脂を使用。この樹脂は元々コンクリートの剥落防止用に高速道路等で実績を上げており、一般的なアクリル系樹脂よりも飛躍的に高い耐久性・柔軟性・防水性を備える。
塗膜強度:1平米あたり最大10トン以上、40年後でも3.3トンの引張強度を保つ
意匠性:透明・3分艶仕上げで外観を損なわないデザイン
施工性:1成分型で現場混合作業不要、従来比で工程数を半減、短工期・省人化が可能
第三者機関の性能評価も高く、瑕疵担保保険でも10年保証が付帯できるようになった。まさにタイル剥落抑止の“新基準”となる製品だ。

ワンストップ化が変える業界構造
「剥落防止くん」の最大の特徴は、外壁点検・施工・保証・管理まですべてを一括窓口で実現できる点だ。これまでは診断・工事ごとに別業者へ依頼が必要で、工事の重複や品質バラつき、保証の分断が起こりやすかった。ジェブのワンストップ型サービスは、これらの煩雑さを解消し、管理組合・オーナー・現場作業者の負担を大きく軽減する。
「現況診断だけでなく、適切な対策・施工計画の立案、アフターフォローや保険までを含むサービスの一元化」こそ、これからのマンション・公共建造物の長寿命化・資産保全のスタンダードになり得る。それは、登壇した有識者の共通認識でもあった。
これからのマンション・公共建築管理のあるべき姿
発表会には、前内閣府地方創生推進事務局長の市川 篤志 氏とPLジャパン株式会社 代表取締役 松川 幸弘 氏も参加。アドバイザーや専門家の立場から、社会的背景と製品の意義を語った。
市川氏「日本の分譲マンション戸数は700万戸を超え、人口の1割近くが集合住宅で生活。ストックの高経年化により、大規模修繕・安全対策が喫緊の課題となっている」
松川氏「管理組合での意志統一や資金捻出が難しい現実があり、特に危険箇所の修繕を“分かりやすく”“合理的に”進める体制が必要。外壁事故は、命と資産価値の両方を守るため、今後ますます社会の共感・理解を広げることが求められる」
今後の課題と広がる期待
「剥落防止くん」の取り組みは、持続可能な社会の実現にも寄与している。タイルの再貼替や再塗装の頻度削減による建材廃棄物の減少、資源保全、事故低減による安全なまちづくり(SDGs目標11)の達成にも貢献。土木構造物や公共インフラ分野への展開可能性も大きく、今後は多様な用途で利用が広がることが期待される。
発表会の終盤では「新しいサービスゆえ、さらなる認知拡大と、“建物の命と安心”の意義を広く社会へ伝えることが重要」との指摘もあった。サービスを社会標準として定着させるには、管理組合のみならず、行政や関連会社との連携、広報活動の強化が不可欠だ。
今後は初期需要の高いマンション管理業界をはじめ、公共施設・商業ビル・土木インフラの維持管理市場へと裾野が広がる見込み。会場では「日本発、世界へ発信できる安全技術」として、さらなる技術進化・事業展開への期待も述べられた。
外壁タイルの剥落という「見えないリスク」に対し、調査・診断から保全施工、保証までシームレスに提供する「剥落防止くん」。その背景には社会的課題の深刻化、技術進展、そして現場・住民の安心を守る強い使命感がある。
今後ますます進行する建物の老朽化において、「剥落防止くん」が新たな“命綱”として日本の都市インフラを支えていく、そんな現場の変革と新しい価値創造に期待したい。