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カウシェが13億円を調達しAIによるEC体験の高度化へ前進

買い物体験の再定義を掲げるカウシェが、2025年6月24日にシリーズCラウンドを完了したと発表。今回の資金調達により、同社の累計調達額は約46億円に到達。直近のラウンドでは約13億円を調達し、今後はAI機能の高度化とサービス体験のさらなる進化を図る構えだ。

カウシェは、シェア買い形式のECアプリ「カウシェ」を運営するスタートアップで、2020年のローンチ以来、友人や家族と一緒に買い物を楽しむ“共同購入”というユニークな体験価値を提供してきた。アプリでは、ユーザー同士が商品をシェア購入することで割安に購入できる仕組みが採用されており、SNSを通じた拡散効果とコミュニケーションを促進する新しいECモデルとして注目されている。

今回の資金調達ラウンドには、既存投資家に加えて新規の複数のベンチャーキャピタルが参加したとされ、評価額や個別出資者の詳細は公表されていない。一方で調達資金の使途として、同社はAI技術を活用したレコメンド機能やユーザー分析の高度化、パーソナライズ体験の強化を掲げており、単なる価格訴求型のECにとどまらない進化を目指すという。
また、アプリ内のユーザー行動を元に商品提案を行う「AIバイヤー」機能や、個別ニーズに応じたキャンペーン構築、さらにはチャットボットを活用した接客体験など、AIを軸とした技術投資に重点が置かれている。すでにテスト導入されているパーソナライズ・フィード機能は、CTRや購入転換率の向上にも寄与しているとのことで、収益性改善への貢献も期待されている。

カウシェはこれまでにも、ソーシャル性を軸としたUI/UXや、コスメ・食品・日用品といったカテゴリごとの戦略的拡充を進めてきた。特に、LINEやInstagramを活用した集客施策においては、若年層女性を中心に支持を集め、アプリのダウンロード数も着実に増加している。
競合ひしめく国内EC市場において、単品販売に依存しない“共感型消費”の提案は、差別化の大きな武器となりつつある。今後は、物流網の整備やCRM基盤の強化にも投資を進める方針で、ユーザーライフタイムバリュー(LTV)の向上を重視した成長戦略が描かれている。

カウシェ代表の門奈剣平氏は、今回の資金調達について「単なる販売チャネルの最適化にとどまらず、買い物体験そのものをアップデートする取り組みを加速させたい」とコメントしており、生活者目線のサービス開発とテクノロジーの融合によって、新たな市場創出に挑む姿勢を鮮明にしている。

ポストZ世代がECに求めるのは「速さ」や「安さ」だけではない。カウシェが提案する“つながりを通じた購買体験”がどこまで浸透し、継続的な成長へと結びつくか。アプリ経済圏の中で存在感を示し続けることができるかどうかが、今後の成長を左右することになりそうだ。