AcompanyがシリーズBで11億円調達しプライバシーテックの未来を語る記念イベントを開催

個人情報の匿名化技術を手がけるスタートアップAcompanyが、シリーズBラウンドで総額11億円の資金調達を実施。その節目を記念し、2025年6月5日にオンラインイベントを開催した。イベントには投資家や関係者が登壇し、資金調達の背景や今後の事業戦略について語る内容となった。
Acompanyは、名古屋大学発のスタートアップとして2018年に創業。個人情報を活用しながらも、プライバシーを守る「匿名加工技術」の開発・提供を行っている。特に、同社が開発する「プライバシー・プロテクティング・コンピュテーション(PPC)」は、個人情報を安全に利活用するための独自技術として注目されている。官公庁や金融機関、医療機関といった高いセキュリティ基準を求められる領域での導入実績もあり、情報利活用社会のインフラを支える存在として存在感を高めている。
今回の資金調達ラウンドでは、既存株主に加えて新たな投資家も参加。累計調達額は20億円を超え、プロダクトの高度化およびグローバル展開の準備が進められることになるという。
イベント当日は、Acompany代表の高橋亮祐氏がモデレーターを務め、主要投資家とのセッションが行われた。セッションでは、資金調達に至るまでの経緯や、今後の展望について率直な対話が繰り広げられた。特に注目されたのは、同社が掲げる「Privacy Techのグローバル標準を日本から生み出す」というビジョンだ。今後は、既存の匿名加工技術をさらに発展させ、複数の企業や自治体が安心してデータを連携・利活用できる環境を整える方針だという。また、欧州のGDPRや米国の州ごとのデータ保護法制を見据えた技術開発も視野に入れており、法制度と技術の橋渡しを担うスタートアップとしての役割が一層強まるとみられている。
さらに、投資家との対話のなかでは、プライバシーテック領域の市場拡大にも言及があった。AIの高度化に伴い、センシティブなデータを含む学習や推論のニーズが増しており、プライバシー保護とデータ利活用の両立が業界共通の課題になっている。Acompanyはその解決に取り組む先駆者として、社会課題と向き合い続ける構えだ。
今回のイベントは、単なる資金調達の報告にとどまらず、今後の戦略や社会的意義を発信する場となった。データ社会の土台を支える存在として、Acompanyの今後の動きが業界内外から一層注視されるだろう。