日産が掲げる大胆変革「Re:Nissan」5000億円のコスト削減と2万人削減へ

日産自動車が2025年6月21日、新たな中期経営計画「The Arc」に基づき、事業再編とコスト構造の見直しを柱とする大規模改革プログラム「Re:Nissan」を発表した。経営の立て直しと成長軌道への転換を目的に、固定費・変動費合わせて総額5000億円のコスト削減、国内外7工場の閉鎖、従業員約2万人の削減といった、過去最大級のリストラクチャリングが掲げられている。
日産自動車は、横浜市に本社を構える国内大手の自動車メーカー。長年にわたりグローバル展開を進めてきたが、ここ数年は販売台数の伸び悩みや収益性の低下が課題となっていた。2023年度の営業利益率はわずか1.8%にとどまり、同業他社との競争力格差が顕在化。今回の「Re:Nissan」は、こうした状況に終止符を打つ構造的な変革として位置づけられている。
計画の第1の柱は、5000億円に及ぶコスト削減だ。内訳としては、固定費と変動費をそれぞれ2500億円ずつ圧縮する。調達費用の見直し、物流・生産効率化の徹底、また業務プロセスのデジタル化を通じて、原価構造の再構築が進められるという。
第2の柱は、抜本的な構造改革である。人員面では、当初想定していた9000人規模の削減に加え、最終的にグローバル全体で約2万人の削減を見込む。拠点戦略においては、現在17あるグローバル工場のうち7工場を2027年度までに閉鎖し、10拠点体制に集約する方針が示された。これにより、生産能力の過剰を是正し、供給と需要のバランスを最適化する狙いがある。
さらに、サプライチェーンと開発体制の効率化に向けて、部品点数を最大7割削減する計画も明らかにされた。車両開発の共通化と部品のモジュール化により、開発期間の短縮と投資の最適化が図られるという。
日産のイヴァン・エスピノーサCOOは記者会見で「閉鎖をしないことは無責任」と断言し、過去のしがらみに縛られない徹底的な変革を打ち出した。なお、今回の施策は日本市場にも影響を及ぼす見通しであり、国内工場や人員体制の見直しも含めて、既存の生産モデルの再検証が進められていくとみられる。
同社は今後、電動化とソフトウェア領域での投資強化を通じて、ブランド価値の再構築と新たな競争優位の確立を目指す構えだ。抜本的な構造改革がどこまで実行に移され、成果をもたらすかが、日産の次の10年を左右するといえそうだ。