NEW

tamura

日本企業の賃上げ率が34年ぶりの高水準に

2025年7月3日に、労働組合の全国組織である日本労働組合総連合会(連合)が、2025年春闘における賃上げ交渉の集計結果を発表した。それによると、主要組合が妥結した平均賃上げ率は5.25%となり、バブル経済期の1991年以来、実に34年ぶりの高水準となった。

この結果は、物価上昇を背景とした実質賃金の回復に対する社会的関心の高まりや、政府の「新しい資本主義」政策による賃上げ促進策、企業側の人材確保競争などが複合的に作用した結果とされる。中でも大手企業だけでなく、中堅・中小企業においても前年を上回る賃上げ水準が見られた点が特徴的であるという。

連合の集計によれば、集計対象の企業数は約5,000社。そのうち、定期昇給分を含めた月例賃金の引き上げ額は平均で16,500円にのぼる。これは2024年(平均約11,500円)と比較しても大きな伸び幅となっている。特に、製造業や運輸、サービス業など幅広い業種で5%を超える引き上げが確認された。

背景には、日本経済全体における構造的な人手不足と物価上昇の定着がある。特に人材獲得競争が激化する中で、企業が待遇改善を迫られる構造が浮き彫りとなっており、実力のある人材をつなぎとめるための“攻めの賃上げ”が広がっている。また、厚生労働省が6月に発表した2024年度の一般労働者の平均基本給が名目で2年連続プラス成長を記録しており、今回の春闘結果はその流れをさらに後押しするものとなった。

加えて、岸田政権が掲げる「三位一体の労働市場改革」によって、企業側の賃上げムードが醸成された点も見逃せない。政府は「賃上げ税制」を拡充し、賃上げに積極的な企業への減税措置を拡大している。特に中小企業にとっては、これらの政策的支援が実質的な後押しとなっており、今回の春闘では従来よりも踏み込んだ条件提示が可能となった企業も多いと見られている。

一方で、依然として中小零細企業や地方の事業者においては、物価上昇分を上回る十分な賃上げができないケースもあり、実質賃金の回復にはまだら模様も見られる。日本全体の消費回復や景気底上げにつなげるには、賃上げの動きをより広範に波及させていく必要があるだろう。

さらに、今回の結果は今後の最低賃金の議論にも影響を与えるとみられる。中央最低賃金審議会は現在、2025年度の最低賃金引き上げ幅を検討中であり、今回の平均賃上げ率5.25%という結果は、過去最高の引き上げを後押しする材料になるとの見方もある。

賃上げが経済全体の好循環につながるかどうかは、今後の企業業績や物価動向、さらには内需の回復に左右される部分も大きい。だが、今回の34年ぶりの高水準という事実は、賃金を取り巻く環境が大きく転換点を迎えていることを物語っている。

企業は人材に対する投資姿勢をより鮮明に打ち出し、労働者も転職やスキルアップを通じて自らの市場価値を高めていく局面にある。働き方や企業経営のあり方を問い直すこの動きは、今後さらに広がりを見せていきそうだ。