持続可能な社会の実現に向け、社会性と製品性の両面を評価するソーシャルプロダクツ・アワード(以下:SPA)は、3月26日に第12回「ソーシャルプロダクツ・アワード2025」の大賞・優秀賞などを発表した。
12回目となった今年は、
(1)年度テーマ: 令和6年度能登半島地震からの震災復興につながる商品・サービス
(2)自由テーマ: 生活者が「持続可能な社会」づくりに参加できる商品・サービスを募集。
テーマごとに各業界のプロフェッショナルな審査員と、一般公募の生活者審査員による審査を行い、大賞・優秀賞・生活者審査員賞・環境大臣特別賞・ソーシャルプロダクツ賞を選出、合計52の商品が受賞したようだ。
受賞商品の詳細:https://www.apsp.or.jp/spa_award_year/2025/
過去の開催実績・受賞商品:https://www.apsp.or.jp/socialproductsaward/
授賞式には、小林史明環境副大臣も出席し、受賞企業に祝辞を述べた。
<年度テーマ:能登半島地震からの震災復興につながる商品・サービス>
商品: ごろごろ果実の能登ブルーベリー
企業・団体:ひらみゆき農園
【商品概要】
世界農業遺産に認定された豊かな能登の土地で育てたブルーベリーを活用し、規格外の果実も無駄にせず価値ある商品に仕上げている。果実そのままの食感を楽しめる、大粒のブルーベリーを贅沢に使用し、「甘さ控えめ」と「砂糖不使用」の2種類を用意。料理やスイーツに幅広く活用できるため、日々の食卓を豊かに彩ることができる。未利用だった能登のブルーベリーを活かし、地域資源を最大限に活用するこの取り組みは、持続可能な農業と食文化の未来を支えているという。
【審査員コメント】
農家の6次産業化が難しい中、自社開発後も積極的な販売活動を行い、成功を収めていることは特筆すべきところ。さらに、選定された枝の有効活用を進めるだけでなく、その収益を地域農家への支援に充てる姿勢も素晴らしい。健康志向を意識した糖分の調整や食感の工夫により、より多くの人々に受け入れられる製品となっている。味も非常に美味しく、多くの人に支持されることが期待される。また、クラウドファンディングを活用し、剪定ばさみの提供などを通じて地域の生産者を支援し、産地全体の復興にも貢献している。単なる商品開発にとどまらず、地域産品の価値を高め、持続可能な農業を推進する姿勢に強く共感すると述べた。
<自由テーマ:生活者が「持続可能な社会」づくりに参加できる商品・サービス>
■大賞
商品: 鎌倉焙煎珈琲 フェアトレードかまくらブレンド
企業・団体: 三本珈琲株式会社/国分首都圏株式会社、鎌倉エシカルラボ/鎌倉市
【商品概要】
共同開発したコーヒーは、環境保護と地域支援を軸とした社会循環型の取り組みから生まれた一杯。フェアトレード認証農園から調達したコーヒー豆を使用し、生産者の生活向上と公正な労働環境を実現。
製造には再生可能エネルギーを活用し、食品ロス削減や障害者支援にも貢献している。さらに、地域住民が味やデザインを決定し、売上の一部を鎌倉市の緑地保全基金に寄付。QRコードを活用し、消費者が製品の背景を知ることで、購入を通じた社会貢献が可能に。「未来をつなぐ一杯」として、持続可能な未来に寄り添う特別なコーヒーとなっているようだ。
【審査員コメント】
フェアトレード調達の証明や地域の緑地保全基金への寄付など、具体的な社会課題解決に向けた取り組みを実装している点が評価できる。エシカル・ソーシャル商品でありながら、一般商品と価格面でも競争力を持ち、エシカル消費のハードルを下げている点も特筆すべきである。さらに、鎌倉に特化した地域性を明確に打ち出し、地域の共感を得る仕様・デザインとなっている。自治体や生活者と連携し、味やデザインを鎌倉市内投票で決定するなど、消費者の行動変容を促す工夫が随所に施されている点が高く評価できる。産学官民が一体となる普及啓発活動を積極的に行い、販売を超えて社会・環境課題を自分ごととして考えるきっかけを提供している。自治体を巻き込み、首長の宣言を伴う地域ぐるみの取り組みは、気候変動対策や生産者の人権問題などのコアな課題提起を可能にし、他地域のモデルとなる大いなる可能性を秘めていると述べた。
さらに、この日は受賞した企業が集まり、報道関係者へのプレゼン、説明会が実施された。
「三角コーン」も環境配慮・木製コーンとは
「自由テーマ」 でソーシャルプロダクツ賞を受賞したしたWood Pylon 『KOLMIO』(コルミオ)に注目。この商品は、環境に配慮した木製の三角コーン(カラーコーン)で、プラスチック製品の代替として開発された。
フィンランド語で「三角形」を意味する「KOLMIO」は、その形状を表している。
「レッドハウスファニチャー」の代表・増田善計氏が、公共施設や工事現場で使用されるプラスチック製カラーコーンの環境負荷に着目し、木質化によるゼロカーボン推進を目指して発案。機能性とサステナビリティを両立した木製の折りたたみ式看板・サインで、使用しない時にコンパクトに折りたためることで、収納や移動が容易になっているという。
製品の利用シーンは主に屋内で、受付表示やチラシスタンド、店内案内など、多様な用途に活用可能で、商業施設やイベント会場などでの利用に適していて、景観に配慮した空間にもマッチするデザイン。彫刻やロゴ入れなどのカスタマイズにも対応しており、用途に合わせたアレンジが可能に。
素材には国産木材を使用しており、特に東京や長野で育った木を採用している。これは「循環型林業」を推進するために重要なコンセプトで、適切な森林管理のもとで伐採と植林を繰り返す持続可能なシステムを支えている。木は成長しすぎると二酸化炭素の吸収効率が低下するため、適度な伐採が必要。この製品は、そうして伐採された木材に新たな価値を与える役割を果たしている。
さらに、社会的な価値として、この製品は福祉作業所で製作されている点が挙げられる。障害のある方が製造工程に携わることで、就労機会の創出と社会参加を促進している。これは「林福連携」(林業と福祉の連携)と呼ばれる取り組みの一環で、SDGsの目標にも合致しているのだ。
時間の経過とともに木の風合いが変化していくのも魅力の一つで、使い込むほどに味わい深い見た目になっていく。環境配慮、社会貢献、実用性という3つの価値を兼ね備えた、次世代型の木製サインシステムと言えるだろう。
価格はサイズによって異なり、小型で約2万3千円、大型で約3万円が目安となっている。
近年、企業のSDGsやサステナビリティへの取り組みが加速し、生活者の購買意識もSDGsや環境や社会に配慮した商品を重視する傾向が高まっている。社会的課題の解決と経済活動を両立するソーシャルプロダクツは、今まさに時代の追い風を受け、さらなる広がりを見せている。
次回は、年度テーマ「令和6年度能登半島地震および豪雨災害からの復興につながる商品・サービス」、自由テーマ「生活者が『持続可能な社会』づくりに参加できる商品・サービス」を、2025年7月から応募を受け付けるようだ。
ソーシャルプロダクツ
「エコ(環境配慮)」や「オーガニック」、「フェアトレード」、「寄付つき」、「地域や伝統に根差したもの」など、人や地球にやさしい商品・サービスの総称で、購入者が持続可能な社会づくりに関する行動や団体とつながることができるものを指す。
ソーシャルプロダクツ・アワード(SPA)
SPAは、ソーシャルプロダクツの普及・推進を通して、持続可能な社会を実現することを目的にした、日本で初めての、そして唯一の、ソーシャルプロダクツを表彰する制度。優れたソーシャルプロダクツの情報を生活者に広く提供するとともに、ソーシャルプロダクツを通して持続可能な社会づくりに取り組んでいる企業、団体を応援している。