tamura

未利用熱を活用した発電技術を開発するelleThermoが「はたらく、あそぶ、ひらめく。」賞を受賞

未利用熱を活用した発電技術を開発するelleThermoが、恵比寿ガーデンプレイスが主催する「はたらく、あそぶ、ひらめく。」賞を受賞した。この賞は、多様な刺激からイノベーションを生み出し、新たな価値を創出している企業を表彰するものであり、elleThermoの先進的な技術開発が高く評価された。

elleThermoとは、東京工業大学発のスタートアップ企業である。未利用熱を活用する独自技術「半導体増感型熱利用発電(STC)」の開発・実用化を目指しており、室温程度の低温熱から直接電力を生み出す革新的なシステムを手がけている。代表取締役を務める生方氏は、「未来世代により良い地球環境を残したい」という思いを原点に、研究をスタートさせたという。従来はエネルギー源として見過ごされてきた低温熱を新たな発電源に転換し、持続可能な社会の実現に寄与することを目指している。

今回受賞対象となったelleThermoの技術「STC」は、従来の熱電発電とは異なり、温度差を必要とせず、室温程度の熱エネルギーを直接電気に変換できる特長を持つ。色素増感型太陽電池(DSSC)の仕組みを応用したもので、光ではなく熱による電子の移動を活用して発電を行う仕組みだという。この技術により、工場、データセンター、住宅内機器、さらには放射性廃棄物貯蔵施設など、あらゆる場所で発生する未利用熱を活用することが可能になるとされている。

elleThermoは現在、マイクロワットレベルでの発電を実現しており、今後は素子の大面積化・積層化・薄層化を通じて、ミリワット、さらにはワットレベルの出力を目指しているとのことだ。最終的には、60センチメートル四方のパネルを複数枚組み合わせ、200ワット級の「サーモパネル」を開発し、都市部を中心に未利用熱を活用した分散型電源網の構築を推進していく方針だという。

「はたらく、あそぶ、ひらめく。」賞の審査においては、未利用エネルギーを持続可能な発電リソースへと変換する同社の挑戦が、「新たな未来を切り拓く発想」として高く評価されたようだ。今後、elleThermoは実証実験の拡大や事業パートナーとの連携を進め、2030年ごろの本格的な社会実装を目指していく構えだ。

未利用熱という新たな資源に光を当てたelleThermoの取り組みは、脱炭素社会の実現に向けた一歩として、今後も注目を集めるだろう。