【40〜60代のフリーランスITエンジニア252名調査】「オファー減少」を感じる年齢は平均54.7歳。約6割が対策打てず
生成AIの台頭、DX加速、クラウドネイティブへの移行など、IT業界はここ数年で、かつてないスピードで変貌を遂げている。企業のシステム刷新需要は高まる一方で、求められるスキルセットも急速に塗り替わり、エンジニア市場の「価値の基準」そのものが変わりつつある。
こうした中、シニアエンジニア特化のフリーランス求人サイト「レガシーフォース」を運営する株式会社モロは、40〜60代のフリーランスITエンジニア252名を対象に「求人と年齢に関する実態調査」を実施した。
調査では、仕事のオファーが明らかに減ったと感じた年齢の平均が54.7歳であることが判明。しかし対策を講じているエンジニアは少数派にとどまり、多くが有効な手を打てていない実態が浮かび上がった。また、「ブルーカラービリオネア」と呼ばれる高収入の現場職への関心も高まっており、シニアエンジニアのキャリア観に変化の兆しが見られる。

※本記事は、シニアエンジニア特化のフリーランス求人サイト「レガシーフォース」を運営する株式会社モロの「求人と年齢に関する実態調査」より作成。
フリーランスITエンジニアがオファー減少を感じた年齢は平均54.7歳。6割超が「対策できず」、約半数がブルーカラー転向「アリ」【40〜60代252名調査】
https://freelance.legacyforce.jp/articles/detail/engineer-offer-decline-age-survey
■ オファー減少を体感する年齢、平均54.7歳 早い人は30代から

「仕事のオファーが明らかに減ったと感じたことがあるか」という質問では、252名中59名(23.4%)が「明らかに減った」と回答した。年代別で見ると、40代は5名(8.5%)、50代は15名(25.4%)、60代以上は39名(66.1%)と、年齢を重ねるほど減少を実感する割合が顕著に上昇している。
オファーが「明らかに減った」と感じた具体的な年齢は、平均は54.7歳。年齢帯別では「60〜64歳」が最多の17名(28.8%)、次いで「50〜54歳」が12名(20.3%)となった。一方で、30代という早い段階から減少を感じているケースも存在しており、年齢による選別は必ずしもシニア世代だけの問題ではないことも示された。
■ 原因の1位は「年齢」、しかし半数超が「原因に心当たりなし」

オファーが減少した原因として挙げられた項目のうち、最多は「年齢」の90名(35.7%)。続いて「自分の得意分野の需要低下」29名(11.5%)、「求められるスキルの高度化」28名(11.1%)、「希望単価と市場単価のミスマッチ」27名(10.7%)、「生成AIの普及・進化による案件減少」26名(10.3%)が僅差で続いた。
一方、129名(51.2%)は「特に原因は思い当たらない」と回答しており、自覚のないままオファーが減少しているケースが半数を超えることが分かった。自己認識と市場実態のギャップが、対策の遅れにもつながっている可能性がうかがえる。
■ 対策は「何も動けていない」が約6割 市場価値向上への行動は少数

オファー減少への対策については、「特に何も動けていない」が157名(62.3%)で最多となった。具体的なアクションとしては、「希望単価・年収条件を下げた」14名(5.6%)、「スキルセットの更新」7名(2.8%)、「リファラル活用」4名(1.6%)と続くが、いずれも少数にとどまる。
問題を認識しながらも具体的な行動に踏み出せないエンジニアが多数を占めており、スキル更新やネットワーク活用といった市場価値向上に直結するアクションを取れている層は相対的に少ない。「条件を下げた」という消極的な対応が最も多い点からも、有効な打ち手が見つかっていない実態が浮かび上がる。
■ 年齢とともにオファーの「質」も低下。年収条件やスキルマッチ度に変化

年齢を重ねてのオファー内容の変化については、「特に変化は感じない」が149名(59.1%)と最多。ただし変化を感じている層では、「条件(年収・単価)が下がった」が40名(15.9%)で最多となり、「自分のスキルと合わない案件が増えた」が35名(13.9%)と続いた。オファーの件数が減るだけでなく、内容面でも条件やマッチ度が低下している傾向がある。
■ ブルーカラー転向「あり」が約5割 「ブルーカラービリオネア」への関心が浸透

現場職(ブルーカラー職)への将来的な転職可能性を聞いたところ、「むしろ興味がある」27名(10.7%)、「年収が維持できるならあり」26名(10.3%)、「切羽詰まったらあり」68名(27.0%)を合わせた121名(48.0%)が、現場職への転向を選択肢として捉えていることが分かった。
近年、配管工や電気工事士などの熟練現場職が高収入を得る「ブルーカラービリオネア」という概念が注目を集めており、ITエンジニアのキャリア観にもその影響が見え始めている。一方で「IT業界以外は想像がつかない」66名(26.2%)、「絶対にない」65名(25.8%)という回答もあり、現場職への転向に対する考え方は大きく二分される結果となった。
こうした実態について、レガシーフォースを運営する株式会社モロ代表取締役の前田洋平はこう述べている。
「今回の調査では、仕事のオファーが減ったと感じる年齢は平均54.7歳であることが分かりました。一方で過去の調査では、40〜60代のITエンジニアは高い学習意欲や就業意欲を持ち、年下の管理職に対しても柔軟な姿勢を示していることが明らかになっています。
当社のプラットフォームでは、年齢に関わらず第一線で活躍し続けているエンジニアを数多く見てきました。そうした方々に共通しているのは、特定領域における高い専門性に加え、長年の現場経験で培った判断力や課題解決力を市場ニーズに合わせて適切に発信できている点です。経験豊富なエンジニアの知見は社会にとって貴重な人的資本。年齢ではなくスキルや経験で評価される環境が広がることで、エンジニア不足の解消だけでなく、業界全体の生産性向上にもつながると考えています」
今回の調査が示すのは、単なる「シニアエンジニアの雇用問題」ではない。業界の急変に対して、当事者が自分ごととして動き出せていないという、より構造的な課題だ。
オファーが減り始める54.7歳という数字は、多くのエンジニアにとって「まだ先の話」に映るかもしれない。しかし対策は、余裕があるうちにしか打てない。スキルの棚卸し、専門領域の再定義、人脈の再構築——いずれも、一朝一夕には実らないものばかりだ。
ベテランエンジニアの持つ現場経験が持つ重みは、若手エンジニアには代替できない。必要なのは、その価値を「市場が求める言葉」に翻訳する作業だ。ベテランエンジニアの知見は、これからも市場にとって必要不可欠だ。
