カナダのCouche‑Tardがセブン‑イレブン買収を撤回 流通再編の動向に波紋広がる

2025年7月17日に、カナダを拠点とする大手コンビニエンスストア運営企業Alimentation Couche‑Tard(アルメンテーション・クシュタール)が、セブン‑イレブンの買収計画を正式に撤回を発表した。流通業界ではこの動きを受け、再編の流れに新たな影響が及ぶとの見方が広がっている。
Couche‑Tardは、世界で約14,000店舗以上を展開し、主に北米・ヨーロッパで事業を展開するコンビニ大手。2017年に米国のCircle Kブランドを強化して以降、積極的なM&A戦略を通じてグローバル展開を進めてきた。一方、セブン‑イレブンは日本のセブン&アイ・ホールディングス傘下であり、国内外で2万店超のネットワークを持つ。
今回の買収撤回は、交渉が最終段階に入っていたと見られる中での決断であり、両社の戦略的思惑がすれ違ったことが背景にあると推測されている。特に、為替や利上げの影響を受けた資金調達環境の変化、また小売市場のグローバル競争激化が意思決定に影響を与えた可能性がある。
この動きは、小売・物流の再編を巡る国際的な勢力図にも波及し得る。すでにAmazonやGoogleといったテックジャイアントは、自社の物流ネットワークや無人店舗技術を通じてリテール分野への進出を進めており、セブン‑イレブンの動向は、そうした企業の戦略にも少なからぬ影響を与えると見られている。
また、Couche‑Tardの今後の成長戦略にも注目が集まる。過去には仏小売大手カルフールへの買収提案を巡ってフランス政府の反発を受けた経緯もあり、次なる成長の方向性を見極める重要な転換点と位置付けられている。
一方、セブン&アイ側も、国内事業の再編や米国事業の強化などが焦点となっており、単独でのグローバル展開の持続性が問われる局面を迎えている。今後の提携戦略やM&Aの動向が、業界再編のカギを握ることになりそうだ。
流通とテクノロジーの融合が進む中、今回の買収撤回は単なる一企業の判断にとどまらず、業界全体の構造変化に一石を投じる動きとして受け止められている。