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OpenAIが「AI搭載ブラウザ」のリリースを予告──Google Chromeへの対抗軸となるか

2025年7月10日に、OpenAIが自社公式Noteにて、AIを中核に据えた次世代ウェブブラウザの開発に着手していることを明らかにした。記事内では「従来のブラウザの枠を超える、新たなWeb体験を提供する」としており、ChatGPTをベースとした対話型インターフェースの搭載が想定される。Google Chromeを筆頭とした既存のブラウザ市場に対して、AIファーストのアプローチで挑む構えだ。

OpenAIは、米国サンフランシスコに本社を構えるAI研究開発企業。大規模言語モデル「GPT」シリーズの開発元として世界的に知られており、2022年末に公開された「ChatGPT」は世界中で爆発的な利用を記録。現在では、有料版のChatGPT Plus、ビジネス向けの「ChatGPT Team」「Enterprise」などの商用展開も進んでいる。2024年以降は、マルチモーダル対応やカスタムGPT機能の提供により、個人・企業を問わず幅広いユースケースに対応。AIによる生産性向上や業務自動化を推進する存在として、ビジネス領域でも急速に影響力を高めている。

今回の発表は、OpenAIの開発者チームによるNote投稿を通じて明らかにされた。タイトルは「“Webは、もっと個人的になれる”」で、現行のウェブブラウザが抱える情報過多・UIの複雑さ・操作性の限界といった課題を指摘。その上で、「AIが前提となったブラウジング体験こそ、これからの情報アクセスの主軸になる」と強調した。
新ブラウザのコンセプトは以下のように要約される。すなわち「ユーザーが何を知りたいのか」「なぜそれを探しているのか」に即応する対話型ナビゲーションを実現すること。従来の検索→クリック→遷移という構造から脱却し、対話を通じて必要な情報を構造化・要約し、関連文脈まで整理して提示する機能が想定されている。また、Webページの内容を即時に読み取り、ユーザーの関心に応じて重要ポイントを抽出・翻訳・議論するといった動的支援も実装予定だという。

さらに注目されるのは、ブラウザそのものが「学習するパートナー」として振る舞う点である。ユーザーの行動傾向、関心領域、調査スタイルなどを継続的に学習し、次第に「その人にとって最適なWeb体験」をパーソナライズしていく設計思想が語られている。これにより、既存の拡張機能やアドオンでは実現し得なかった、一貫した知的サポートが可能になると見られる。

一方で、検索市場の覇権を握るGoogleとの競合は避けられない。Chromeは現在、世界のブラウザシェアの約60%を占める圧倒的な存在であり、Google独自の検索・広告・アカウント連携との統合が強みだ。OpenAIが新たに提示するプロダクトは、その支配構造に対して「AI時代にふさわしいオルタナティブ」を打ち出す可能性を秘めている。

なお、正式なプロダクト名やリリース時期については現時点で明言されていないが、すでに内部でプロトタイプが稼働していること、限定的なユーザーテストが近く開始されることが示唆されている。これにより、OpenAIがChatGPT以外の領域でも「フロントエンド」の主導権を握ろうとしている点は見逃せない。

AIが人間の思考や探索をどう変えるのか。OpenAIのブラウザ構想は、その問いに対する先鋭的な提案のひとつとなりそうだ。検索・閲覧・学習というあらゆる「Webとの対話」のあり方が、根本から再定義される日は近いのかもしれない。