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空気から水をつくるUravuがシリーズAを実施

空気から水をつくる──そんな一見SFのような技術を現実のプロダクトとして届けているのが、Uravu Labsだ。同社は2025年7月10日、シリーズAラウンドでの資金調達を発表した。調達額は非公開ながら、インドのテック系ファンドを中心に複数の投資家が参加したとされており、今後のグローバル展開に向けた体制強化が見込まれる。

Uravu Labsは、インド・バンガロールに拠点を置くクリーンテック・スタートアップで、脱炭素社会に貢献する技術開発をミッションに掲げている。主力製品は、再生可能エネルギーを利用して大気中の水蒸気から安全な飲料水を生成する「Uravu」シリーズ。電気を使わず、太陽熱や廃熱などの再エネ熱源を活用することで、ゼロカーボンかつ低コストでの水の供給を可能にしている。

この技術は、特に水資源の乏しい地域や災害時の緊急支援、さらには持続可能な観光インフラの構築といった分野で注目されており、2023年以降は東南アジア・中東・アフリカなどのホテルや自治体との協業も進行中だ。導入事例としては、インド・ゴアの高級リゾートホテルやシンガポールの環境展示会などがあり、すでに50台以上のユニットが稼働しているという。

今回のシリーズA調達は、製造拠点の拡充と国際マーケットへの浸透を見据えた動きとされている。特に日本市場への参入は重要なマイルストーンと位置付けられており、今年後半には都内での実証実験や地方自治体との連携プロジェクトも予定されている。

代表のAnand Jain氏は発表の中で、「水は最も基本的なインフラでありながら、最も不均等に配分されている資源のひとつです。我々は、“空気から水をつくる”という選択肢を、世界中の誰もが当たり前に使えるものにしたい」と語っている。

調達のリードインベスターには、インドのClimate Seeds Capitalが参加。そのほか、欧州のクリーンテックファンドや、既存投資家である3one4 Capitalも引き続き支援を継続する。さらに、環境系のアクセラレータープログラム「The Green Frontier」における支援も受けており、技術開発・知財戦略・国際認証といった分野でのアドバイザリーボード体制も強化される見通しだ。

近年、気候変動や都市化の進行により、世界的に水ストレス(需要過多による水不足)が深刻化している。国連の推計によれば、2030年には世界人口の約半数が水不足地域に居住する可能性があるともいわれており、既存の上下水道インフラとは異なるアプローチが求められている。こうした背景の中で、Uravuのような「分散型水供給ソリューション」が果たす役割はますます大きくなっていくだろう。

水をつくる、という行為自体が新しい社会インフラとなる時代において、Uravuの挑戦は単なる技術革新にとどまらず、「誰もが水を手にできる」世界の再構築へとつながる。今後の展開にも、世界の水インフラを揺るがす可能性を秘めた動きとして期待がかかる。