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TikTokが仕掛ける“次のEコマース” 日本上陸した「TikTok Shop」が変える消費行動

ショート動画プラットフォーム「TikTok」を運営するBytedanceが、日本市場におけるEC機能「TikTok Shop」を正式にローンチした。すでにアメリカや東南アジア諸国で展開されてきたこのサービスは、動画視聴から購買までをワンストップで完結させる“動画内EC”の代表例として注目を集めてきた。今回の日本上陸により、国内のマーケティング業界や小売業界にも大きなインパクトが及ぶと見られている。

TikTok Shopは、クリエイターが投稿する動画やライブ配信の中に、商品を直接購入できるリンクを埋め込む仕組みを持つ。視聴者は動画を見ながら商品をタップし、TikTok内の決済機能で即時購入できる。コンテンツと購買を切り離さないこの設計は、いわゆる「インフルエンサーマーケティング」の進化形とも言われており、すでに中国や東南アジアでは大きな収益を生んでいる。

Bytedanceはすでに6月末時点で一部国内クリエイターを対象にベータ版の提供を開始しており、7月7日前後には本格的な国内展開の開始が確認された。企業やブランドの出店も可能となり、初期段階ではアパレルや美容、雑貨などのカテゴリで商品展開が広がっている。さらに、国内での運営体制として、国内法人TikTok Japan内に専任のECチームを立ち上げており、物流、決済、カスタマーサポートといったインフラ整備にも着手しているという。

TikTok Shopの最大の特徴は、「自然な導線で商品に出会えること」にある。これまでのECでは、ユーザーは検索や広告からECサイトに遷移し、商品ページで情報を比較するプロセスが主流だった。一方、TikTok Shopは“感情ベース”での購買に最適化されており、「欲しい」と思った瞬間に購入できる体験を提供する。これにより、従来の購買行動とは異なる衝動的な消費が活性化される可能性が高い。

一方で、消費者保護や透明性の担保という観点では課題も指摘されている。特に、クリエイターと販売者の関係性、ステルスマーケティングのリスク、返品対応など、日本の消費者が求める安心感にどこまで応えられるかが今後の普及に大きく関わってくる。

国内ではすでに楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングといった大手ECが存在しており、加えてZ世代を中心に浸透しつつある「ライブコマース」も勢いを見せている。TikTok Shopの登場は、この競争市場に新たな波をもたらすことになりそうだ。特に、TikTok上で強い影響力を持つクリエイターや、これまでSNS集客に注力してきた中小ブランドにとっては、新たな販路拡大の選択肢となる。

これまでマーケティングは「認知から購買まで」を分断された体験として捉えてきたが、TikTok Shopのような仕組みが広がることで、その境界線はさらに曖昧になっていく。もはや「見る」ことと「買う」ことは別の行動ではない。TikTok Shopは、消費者との接点を根本から再設計する試みであり、日本市場におけるECとマーケティングのあり方に、新たな選択肢を提示しているようだ。