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JTB調査で読み解く2025年夏休みの旅行市場 国内横ばい・海外は急回復

2025年7月10日に株式会社JTBが、「2025年夏休み(7月15日~8月31日)」の旅行動向に関する調査結果を発表した。コロナ禍からの回復が進む中、国内外の旅行需要が引き続き堅調に推移する見通しで、特に海外旅行においては、出国者数が2019年比で9割に迫る水準にまで回復することが明らかとなった。

JTBは、旅行・観光業界における国内最大手の総合旅行会社。創業110年以上の歴史を持ち、法人・個人の旅行手配、MICE(企業イベント)運営、インバウンド支援、地域活性化事業など幅広い領域に展開している。新型コロナウイルスの影響を大きく受けた業界の中でも、JTBは早期からデジタルシフトや需要変動への対応を図り、回復基調に乗せる取り組みを継続してきた。同社の旅行動向調査は、旅行業界のみならず観光政策や経済動向の指標としても注目されている。

発表によれば、2025年の夏休みにおける国内・海外旅行を合わせた旅行人数は前年比4.3%増ののべ6880万人と予測。内訳を見ると、国内旅行者数は前年並みの6750万人にとどまる一方で、海外旅行者数は前年比80.6%増の130万人と急増する見込みである。特に円安の継続にもかかわらず、アジア近隣諸国や欧州方面への旅行予約が堅調に伸びているという。

旅行消費額についても大幅な増加が見込まれている。国内旅行の消費額は前年比4.5%増の2兆7800億円、海外旅行の消費額は前年比83.1%増の2900億円と推定され、合計で3兆700億円に達する見通しだ。これは2019年と比較しても約90%の回復水準であり、観光業界にとっては明るい兆しといえる。

消費行動の変化にも注目が集まる。JTBの調査では、旅行先の選定において「物価上昇の影響を受けにくいエリア」や「費用対効果の高い宿泊施設」を重視する傾向が強まっているとされ、体験重視型・コト消費志向も引き続き根強い。都市圏在住者を中心に、週末や短期休暇を活用したマイクロツーリズムの動きも継続しており、各地域における観光需要の分散化が進んでいる。

一方、企業目線では出張とレジャーを組み合わせた「ブレジャー」需要や、福利厚生の一環としてのワーケーション制度の導入により、社員の旅行機会が増えるケースも報告されている。実際、法人利用の宿泊予約件数も前年比で増加傾向にあり、BtoB領域でも旅行業界の回復が可視化されつつある。

また、JTBは2025年の傾向として「旅行の早期予約化」と「デジタル経由の手配比率の上昇」も挙げている。スマートフォンアプリやチャットボットを通じた旅程作成支援、キャンセル保険の利用拡大、目的地でのサステナブルツーリズムへの関心など、コロナ後の新たな旅行スタイルが定着しつつあるようだ。

旅行業界の本格回復を背景に、航空・鉄道・宿泊業をはじめとした観光関連企業では今夏に向けた人員強化や価格改定などの動きも出ており、地域経済への波及効果にも期待がかかる。2025年の夏は、生活者のレジャー消費がどこまで回復し、企業や自治体がそれをどのように取り込めるかが問われるシーズンとなりそうだ。