ドコモが住信SBIネット銀行を関連会社化 約1800億円でTOB成立

NTTドコモが、住信SBIネット銀行を持分法適用関連会社とする方針を明らかにした。2025年7月10日、ドコモは同社に対して行っていた公開買付け(TOB)が成立したことを発表。決済は7月17日に行われる予定で、これにより住信SBIネット銀行の株式24.72%を取得し、連結対象外ながらも経営への一定の関与を強めるかたちとなる。
住信SBIネット銀行は、住友信託銀行(現三井住友信託銀行)とSBIホールディングスによるジョイントベンチャーとして2007年に設立されたインターネット専業銀行。個人・法人向けの預金サービス、住宅ローン、FinTech連携を強みとし、2023年には東京証券取引所スタンダード市場への上場も果たしていた。グループ連携によるスピーディなサービス開発力とデジタルネイティブ層への浸透が成長の背景にあり、特に近年は「NEOBANK」ブランドの展開を通じたBaaS(Banking as a Service)戦略に力を入れていた。
今回のTOBは、ドコモが2024年5月に発表した「スマートライフ領域の成長戦略」に沿った動きと見られている。同戦略では、金融・保険・決済を含むライフスタイル事業を強化する方針が打ち出されており、特に「ドコモ口座」や「d払い」といった既存サービスの拡張と、銀行機能の本格的な統合が焦点となっていた。今回、インターネット銀行の雄である住信SBIネット銀行を関連会社化することで、金融機能の垂直統合と、スマホを起点としたユーザー体験の一体化が可能となる。
ドコモはTOBによって、住信SBIネット銀行の普通株式約3,727万株を1株4,900円で取得。総額にして約1,826億円規模となり、現在のSBIホールディングスの持分に次ぐ第2位の大株主となる。なお、住信SBIネット銀行の上場は2025年8月をもって廃止される見通しであり、今後は非上場化のもとでより柔軟な経営体制に移行する。
一方、SBIホールディングスとの関係性は維持され、同社が保有する株式の一部は住信SBIネット銀行が自己株式として取得する形となる。これにより、NTTドコモとSBIの間には引き続き資本業務提携関係が残り、今後も両社による金融・証券・通信分野での協業が継続される構図だ。
近年、通信キャリアによる金融業界への参入は加速しており、KDDI(auじぶん銀行)やソフトバンク(PayPay銀行)もそれぞれの金融子会社を拡張してきた。今回のドコモによる大型TOBもその流れの一環といえるが、これにより3大キャリアがいずれも銀行機能を戦略の中心に据える時代が到来したといえそうだ。
生活インフラとしてのスマートフォンに、銀行サービスを統合する──。その動きは、通信と金融の垣根を越える次のフェーズを象徴する動きとして、今後の業界の動向にも強い影響を与える可能性がある。