アルプスアルパイン社長が「インド市場に注目」と発信 成長市場での競争力強化を視野に

電子部品や車載モジュールを手がけるアルプスアルパイン株式会社が、今後の成長戦略の鍵として「インド市場」を強く意識していることが明らかになった。2025年7月5日に行われたメディア向け説明会の中で、同社代表取締役社長・栗山年弘氏は、「インドは中長期的に最も成長ポテンシャルの高い市場のひとつ。事業体制の強化とローカルパートナーとの連携を進める」と語った。
アルプスアルパインは、東京都大田区に本社を構える総合電子部品メーカーであり、1953年の創業以来、スイッチやセンサなどのエレクトロニクス部品を軸に、自動車、スマートデバイス、産業機器向けの技術開発を推進してきた。2019年にアルプス電気とアルパインが経営統合し、現在の体制となって以降は、車載情報システムとデジタルインターフェースの融合による製品力の強化を進めている。売上高の約7割を海外が占める同社にとって、グローバル展開は成長の基盤であり、これまでも中国・北米・欧州での戦略投資を積極的に行ってきた。
インド市場への関心は、人口増加と都市化、電動車(EV)市場の成長、さらにはスマートシティ構想といった要因に裏付けられている。インドはすでに世界第3位の自動車市場となっており、今後の車載部品・電子モジュールの需要拡大が期待されている。特に、EV化の加速にともなう熱管理システムやセンサ関連需要は、同社の技術領域と親和性が高いという。
栗山氏は「これまでは中国が最大の成長エンジンだったが、地政学的リスクを踏まえると、インドやASEANへの分散が不可欠」と述べ、すでに現地販売拠点や研究開発人材の拡充に着手していることを明かした。また、今後はローカル生産比率の引き上げと、現地自動車メーカーとの連携強化も視野に入れているという。
一方で、インド特有のサプライチェーン課題や価格競争の激しさについても認識しており、「競争力の源泉は“技術”と“柔軟性”。日本で培った開発力と、グローバルでの製造適応力の両立が成否を分ける」と慎重な姿勢も見せた。
アルプスアルパインは2023年度決算において売上高8,535億円、営業利益407億円を記録。堅調な事業基盤を背景に、次の成長ステージに向けた布石を着々と打っている。中国市場の伸び悩みや欧州景気の不透明感を背景に、今後はインドや東南アジアといった新興成長地域へのシフトが、日本の製造業にとって避けられない流れとなりつつある。
“ポスト・チャイナ”を見据える中で、アルプスアルパインの動向は、他の製造業プレイヤーにとっても一つのモデルケースとなるかもしれない。