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AIでM&A支援を効率化 HerixがON&BOARDから資金調達

2025年6月20日に、ベンチャーキャピタルのON&BOARDが、AI技術を活用してデューデリジェンス業務の効率化を目指すスタートアップ「株式会社Herix」へのリード投資を実施したと発表した。今回の出資は、HerixのAIプロダクトの高度化とビジネススケールの加速を目的とした資金調達の一環であり、他複数の投資家もラウンドに参加しているという。

株式会社Herixは、M&Aやベンチャー投資におけるデューデリジェンス(以下、DD)をAIで支援するプロダクトを展開するスタートアップ企業だ。弁護士や公認会計士、コンサルタントといった専門家によって行われるDD業務は、精緻さが求められる一方で、膨大な資料確認やパターン化された作業が多く、時間とコストが課題となっている。Herixはこの領域に着目し、自然言語処理や生成AIを活用することで、DDの作業負荷を大幅に軽減しつつ、網羅性と正確性を担保するソリューションの提供を目指している。

特に注目されているのが、Herixが独自開発した「AIデューデリジェンス・アナライザー」である。契約書や財務資料などの非構造データを取り込み、重要リスク項目の抽出や定量評価を自動で行うことができるこのツールは、法務・財務・労務といった複数分野にまたがるDDプロセスの合理化を支援する。すでに一部の大手ファンドやM&A仲介会社とのPoC(概念実証)が進んでおり、導入企業からは「分析スピードが従来の3倍」「初期スクリーニングの質が向上した」といった評価も得ているという。

今回の出資を主導したON&BOARDは、スタートアップの成長支援に加え、次世代のプロフェッショナル領域のアップデートを重視する投資方針を掲げており、Herixの目指す「専門家支援の再構築」というビジョンとの強い親和性が評価されたようだ。また、Herixの創業者自身が戦略コンサルタントや投資銀行での実務経験を有しており、現場視点でのプロダクト開発が進められている点も、今回の出資判断における重要な要素となったとみられる。

Herixでは今後、プロダクトの正式ローンチに向けて開発体制を強化するとともに、法務・財務・人事など各領域の専門家との連携を深め、AIによる自動化と人の判断の最適なバランスを追求する構えだ。さらに、今後はDD領域に限らず、企業調査・業界分析といった周辺ニーズへの展開も視野に入れており、B2Bプロフェッショナルサービス市場における新たな標準を創る存在としてのポジション確立を目指していくという。

急速に進むAI化の波の中で、プロフェッショナル業務の再設計に挑むHerixの取り組みに、業界内外からの関心が高まっている。