防衛関連分野スタートアップ事業発表会が東京都で開催

2025年6月16日に、防衛・サイバーセキュリティ分野に挑む国内スタートアップ11社による事業発表会が東京都内で開催された。イベントには防衛装備庁をはじめとする行政関係者、大手企業、ベンチャーキャピタルなどが来場し、各社の技術やプロダクトに対する理解と交流が深められた。
この発表会は、防衛・安全保障領域におけるイノベーションを促進し、民間企業による新技術の活用を後押しする取り組みの一環として企画されたもの。プレゼンテーションやデモ展示に加え、官民間でのネットワーキングの場も設けられ、現場ニーズと技術シーズのマッチングが図られた。
登壇企業には、AIによる映像解析や無人機(ドローン)制御、通信傍受対策、量子セキュリティ、軍事ロジスティクス支援など、多様な領域をカバーするスタートアップが名を連ねた。特に、既存の装備体系やセキュリティ体制に革新をもたらす可能性を秘めた技術が紹介され、来場者からは高い関心が寄せられたという。
国内の防衛関連市場は、長年にわたり大手重工業や官製技術が中心を担ってきた。しかし近年では、米国に倣いスタートアップによるデュアルユース(民間技術の軍事転用)促進や、迅速なプロトタイピングと改良を可能にする“スタートアップ流”の開発手法への期待が高まっている。今回のイベントも、そうした潮流の中で政府とスタートアップの橋渡し役を果たすものと位置づけられる。
参加企業の一つは、自社開発のエッジAIカメラを用いた異常検知技術を披露。小型で省電力ながら、高精度なリアルタイム解析を実現しており、基地防衛や重要施設のセキュリティ運用において実装が期待されている。また、別の企業は、サイバー攻撃に対する脅威インテリジェンスの自動収集と解析技術を提案。防衛用途だけでなく、重要インフラ運営企業にも応用可能なソリューションとして注目された。
本発表会のように、ニッチかつ高難度な市場に対して、技術主導でアプローチするスタートアップが増加している背景には、国内外の地政学リスクやハイブリッド戦への警戒感の高まりがある。防衛装備庁や経済産業省も近年、スタートアップ支援に注力しており、「安全保障×スタートアップ」という新たな連携モデルの構築が進められている。
今後は、防衛省関連の実証試験やフィールドテストの機会創出、調達制度の柔軟化といった制度面での整備も求められるが、すでに一部のプロジェクトでは連携が進行している。こうした動きは、日本におけるスタートアップの成長余地を広げると同時に、国家レベルの技術戦略における民間活力の新たな活用例ともなりうる。
複雑化する安全保障環境の中で、民間発の知恵と技術が担う役割は今後一層大きくなるだろう。スタートアップたちの挑戦は、静かだが確実に、日本の防衛とサイバーセキュリティの未来を塗り替え始めている。