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Integral Geometry Scienceが総額45億円を調達

世界初の次世代型セキュリティゲートを開発するスタートアップ、Integral Geometry Scienceが、シリーズCラウンドにおいて約20億円の第三者割当増資を実施したと発表。さらに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成金約25億円も獲得し、総額約45億円の資金調達を完了したことを発表した。今回の資金調達により、製品開発の高度化やグローバル市場への展開を一層加速する構えだという。

Integral Geometry Scienceは、数学理論に基づくイメージング技術を応用し、これまでにないセキュリティ装置の開発を行うディープテックスタートアップである。特に注目されているのが、同社が独自開発した「スーパーセキュリティゲート」だ。X線や金属探知機を用いずに、非接触かつ高速に人物の持ち物をスキャン・識別できるこのシステムは、空港やスタジアム、公共施設などの大規模施設におけるセキュリティ課題の解決に貢献するものと期待されている。
同社は、東京大学大学院数理科学研究科の研究成果を背景に2016年に設立され、セキュリティ分野における数学の実用化を目指して事業を展開。近年では、防衛・空港・官公庁からの引き合いも増加しており、商用化に向けた技術実証を着実に進めている。

今回のシリーズCラウンドでは、既存投資家に加え、新たに複数の事業会社やベンチャーキャピタルが出資に参加。あわせてNEDOによる革新的技術開発支援を受けたことで、総額45億円という大規模な資金調達が実現した。これにより、ハードウェアの量産体制の確立や、高度なAIソフトウェアとの統合、さらに海外展開に必要な各国の規制対応など、広範な事業フェーズに対応できる体制を構築していくという。

とりわけ、公共インフラやイベント会場などにおけるセキュリティ強化は、パンデミック後の社会において急速に重要性を増している。従来の検査体制が抱える「非効率性」「行列」「プライバシー問題」などの課題に対して、Integral Geometry Scienceのテクノロジーは新たな選択肢を提示しつつある。

「スーパーセキュリティゲート」の導入が進めば、空港やコンサートホール、商業施設などの安全管理が大きく変わる可能性がある。人物がゲートを通過するだけで、金属類や危険物を即時に検知できる非接触スキャンは、利便性と安全性の両立という観点から注目されている。

同社は今後、国内での大規模実証を進めながら、北米や中東、アジア各国への輸出も視野に入れるとしており、すでにいくつかの地域でパートナー企業との協議を進めているという。今回の調達を通じて、数理科学の応用によるセキュリティ分野の変革が、いよいよ現実味を帯びてきた。日常の安心と社会インフラの刷新を両立する技術として、今後の動向に期待が高まる。