「生活が苦しくなった」約4割──手取りの実感と行動に乖離、会社員・フリーランスの実態が浮き彫りに

※本記事はITプロパートナーズによる調査レポートをもとに構成しています
https://biz.itpropartners.com/blog/report/3126/
株式会社Hajimariが運営するITプロパートナーズは、会社員およびフリーランスを対象に、年収や生活実感に関する意識調査を実施した。その結果、約4割が「昨年より生活が苦しくなった」と感じていることが明らかになった。物価高騰や税負担の増大といった要因が背景にあり、たとえ年収が増加していても生活実感の改善には直結していない実態が浮かび上がった。

調査ではまず、昨年と比較した年収の増減を確認。多くの回答者が「ほぼ変わらない」と答える中、会社員では「年収が増えた」との回答がやや多く、フリーランスでは「年収が減った」という回答が目立った。一方で、生活実感に関する質問では、会社員・フリーランスともに約4割が「苦しくなった」と感じていると回答。収入の増減と実感の間にギャップが存在している。

特に注目すべきは、年収が増加したと回答した層においても、生活に余裕が生まれたと感じている人は約25%にとどまり、7割以上が「変わらない」もしくは「苦しくなった」と答えた点だ。会社員・フリーランスともに手取り額は30万円台に集中し、フリーランスでは20万円未満という回答も多く見られた。収入の上下が大きいフリーランスならではの特徴も表れている。

生活が苦しくなったと感じる背景には、物価上昇や税金、社会保険料の負担が大きく影響している。会社員は「収入が上がらない」こと、フリーランスは「収入が不安定である」ことに不安を抱いているという。また、老後の資金不足や漠然とした将来不安を訴える声も多かった。

収入を増やすための取り組みに関しては、「何もしていない」という回答が最も多く、会社員では約29%、フリーランスでは約24%を占めた。行動を起こしている層では、「投資」への関心が高く、次いで会社員は副業や昇進、フリーランスは経費削減やスキルアップといった取り組みが挙げられた。

また、給与や報酬に関する交渉経験に関しては、会社員で約18%、フリーランスで約26%が実際に交渉を行った経験があると回答。企業の業態や規模にかかわらず、交渉経験者は幅広く分布していた。一方で、「交渉したことがない」と答えた人も多く、会社員の57%、フリーランスの50%が交渉そのものを考えたことがないと回答しており、賃上げに対する受け身の姿勢が根強いことも示された。
交渉に成功し、年収を実際に増やした人においては、会社員では「5万円〜20万円未満」の増加が最も多く、フリーランスでは「1万円〜5万円未満」が中心。ただし、フリーランスは収入増加額のばらつきが大きく、30万円以上、さらには100万円以上の大幅な増収を実現したケースも散見された。自己研鑽やトレンドスキルの獲得が、高単価案件の受注につながっていると見られる。

Hajimari 代表取締役の木村直人氏は、こうした結果について次のように述べている。
「たとえ収入が増えていても、物価や税負担の上昇がそれを打ち消してしまう構造が顕在化しています。そのなかで、具体的な行動を取らない人が一定数存在している現状は見逃せません。一方で、投資や節税、自己研鑽といった取り組みに積極的な層も存在しており、若いうちからの自己投資が将来的な収入増加につながる可能性が高いと考えられます。」

経済的な不安が高まる中、今後は受け身ではなく、早期からの能動的な対策が安定した生活基盤を築くうえで重要になってくるのかもしれない。