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東京エレクトロンが元従業員によるTSMC機密取得への関与を確認

東京エレクトロンは2025年8月7日、同社の台湾子会社に所属していた元従業員が、半導体受託生産大手の台湾積体電路製造(TSMC)の企業秘密を不正に取得した事件に関与していたことを明らかにした。すでに当該従業員は懲戒解雇されており、台湾当局による捜査に全面的に協力しているという。

東京エレクトロンは、半導体製造装置やフラットパネルディスプレイ製造装置の開発・販売を手掛ける国内大手企業である。1963年に設立され、半導体分野では世界有数のシェアを誇る。主力製品は成膜装置やエッチング装置などで、グローバルに展開しており、TSMCをはじめとする大手半導体メーカーが主要顧客となっている。近年はAIや次世代半導体需要の高まりを背景に、業績を伸ばしてきた。

今回の事件は、TSMCの先端2ナノメートル(2nm)プロセスに関する技術情報が標的となったとされ、台湾司法当局はすでに6人を逮捕したと発表している。日本の通信社によると、元従業員はTSMCから東京エレクトロンへ転職した後、カフェでTSMC関係者がノートパソコンに表示した機密データを見せられ、それを自身のスマートフォンで撮影していたと報じられている。

ただし、現時点で不正に取得された情報が外部に流出した形跡は確認されていない。東京エレクトロンは声明の中で「法令や倫理に反する行為には断固として対処する」と強調し、企業として高い法令遵守と倫理的行動の維持を改めて表明した。

事件発表後、東京エレクトロンの株価は一時3%を超えて下落し、4月下旬以来の安値をつけた。市場では、同社が世界的な半導体供給網における重要なプレーヤーであるだけに、今回の不祥事による信頼性への影響が意識されたとみられる。

TSMCの先端技術は世界の半導体産業にとって戦略的価値が極めて高く、各国の企業や当局が厳格な知財保護を求める中での今回の事件は、改めてその脆弱性を浮き彫りにした格好だ。東京エレクトロンは今後、捜査への協力と社内統制の徹底を通じて、国際的なパートナーとしての信頼回復に取り組むことが求められる。