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【建設現場作業員487名調査】建設現場に迫る“猛暑離職” 5割超が離職を意識、最も求められる「暑さ手当」の実施率はわずか4.7%

記録的な猛暑が常態化する中、屋外労働の最前線である建設現場への影響が深刻さを増している。2025年6月には熱中症対策が事業者に義務化され、労働環境の整備は法令面でも待ったなしの状況だ。だが、担い手不足という構造的な課題を抱える建設業界にとって、猛暑がもたらす本当のリスクは熱中症だけではないことが分かった。

物流・建設・製造などノンデスク産業向けにHRプラットフォームを提供するX Mile株式会社は、住宅の建設現場で作業・監督を行う487名を対象に「暑さ対策」に関する実態調査を実施した。調査では、暑さを理由に「仕事を辞めたい」と思った経験のある現場作業員が55.9%と半数を超えることが判明。「暑さを理由に人が辞めていく」というそんな“猛暑離職”の懸念が、データで裏付けられつつある。

さらに、現場が最も期待する対策「暑さ手当(現金支給)」の実施率はわずか4.7%にとどまり、求められる対策と実際に提供されている対策の間に大きなギャップがあることが浮かび上がった。

※本記事は、ノンデスク産業向け求人サービス「クロスワーク」を運営するX Mile株式会社の「暑さ対策に関する実態調査」より作成。https://x-work.jp/journal/construction-heat

■ 8割超が「暑さでパフォーマンス低下」、体調不良の経験は6割超

「夏場の暑さによって仕事のパフォーマンスは低下すると感じるか」という質問では、「大幅に低下する」47.8%(233名)、「やや低下する」38.4%(187名)を合わせた86.2%(420名)が低下を実感していると回答した。

また、仕事中に暑さが原因で体調不良を経験した人は、「ある」42.7%(208名)、「何度もある」19.7%(96名)の合計62.4%(304名)。現場の6割以上にとって、暑さによる体調不良は「起こりうるリスク」ではなく、すでに経験済みの現実であることが分かる。

■ 暑さ起因の納期遅延は45.2% 住宅の工期にも影響か

業務への影響も看過できない。暑さによって作業が遅延した経験は73.1%(356名)にのぼり、納期の遅延に至った経験も45.2%(220名)と半数近くに達した。

現場レベルの遅延が積み重なれば、住宅建設の工期、ひいては引き渡しを待つ施主側にも影響が及ぶ。猛暑は現場作業員個人の問題にとどまらず、建設業のバリューチェーン全体、さらには生活者にまで連鎖するリスクといえる。

■ 離職を意識した経験は55.9% 屋外中心の職種では6割超に上昇

今回の調査で最も注目すべきは、暑さと離職意向の関係だ。

暑さが原因で「仕事を辞めたい」と思った経験がある人は、「ある」35.5%(173名)、「何度もある」20.3%(99名)の合計55.9%(272名)。屋外作業が中心の建設業従事者(190名)に絞ると、この割合は61.6%(117名)まで上昇する。

さらに、今後暑さがより厳しくなった場合の仕事の継続については、「不安がある」61.0%(297名)、「続けられる自信がない」12.7%(62名)を合わせた73.7%(359名)が不安を抱えている。周囲で暑さを理由に退職した人を見聞きしたという回答も35.9%(175名)にのぼり、“猛暑離職”はすでに一部で現実化していることがうかがえる。

■ 給与が同じなら53.0%が「暑さの少ない仕事」へ 採用難の実感は68.6%

「現在の給与が同じであれば、夏場の暑さが少ない仕事に転職したいか」という質問には、「ぜひ転職したい」15.4%(75名)、「やや転職したい」37.6%(183名)の合計53.0%(258名)が転職意向を示した。給与条件が変わらなくても、半数以上が暑さを理由とした流出予備軍になりうる計算だ。

加えて、「近年の暑さによって現場職に人が集まりにくくなっていると感じる」との回答は68.6%(334名)。暑さは既存人材の離職リスクを高めるだけでなく、新規人材の確保にも影を落としている。

■ 実施率1位は「ファン付き作業服」42.5%、しかし現場が最も求めるのは「暑さ手当」──実施率は最下位の4.7%

では、企業側の対策はどうか。勤務先で実施されている暑さ対策の最多は「ファン付き作業服支給」42.5%(207名)で、「飲料支給」「塩分補給品支給」(ともに38.4%)、「休憩時間増加」31.8%が続いた。物品・環境面の対策は一定程度浸透しているといえる。

だが、勤務先に最も期待する対策を尋ねると、1位は「暑さ手当(現金支給)」の22.2%(108名)。「ファン付き作業服支給」15.8%(77名)、「工事時期の見直し」15.2%(74名)を上回った。その暑さ手当の実施率は、わずか4.7%(23名)。実施されている対策の中で最下位だった。最も求められている対策が、最も実施されていないというギャップが浮かびあがった。

「より望む暑さ対策」を二択で尋ねた質問でも、「暑さ手当など収入アップ」58.1%(283名)が「夏場の屋外作業を減らし、春・秋中心に工事を行う働き方への見直し」41.9%(204名)を上回った。現場は環境改善以上に、暑さという負荷への直接的な対価を求めている。

 ■ 求人市場は先行して変化 「暑さ対策あり」求人は1年で約2.4倍に

企業側の動きも始まっている。同社が運営する求人サービス「クロスワーク」では、2026年7月時点で暑さ対策を打ち出した求人が388法人・744求人に達し、前年同時期の189法人・306求人から、法人数で約2倍、求人数で約2.4倍に増加した。

具体的には、猛暑・酷暑手当の支給(月2万円、気温35℃以上で1日500円など)、飲料・塩飴の配布、ファン付き作業着の貸与・支給、製氷機・冷風機の設置といった取り組みが挙げられている。採用競争の観点でも、暑さ対策の有無が求職者に選ばれるかどうかの分岐点になり始めているといえそうだ。

こうした実態について、X Mile株式会社代表取締役CEOの野呂寛之氏は、「環境面の対策が着実に広がる一方で、働く人々が本当に求めているのは暑さという負荷に対する正当な対価としての手当ではないか」との見方を示す。その上で、「担い手不足に猛暑が重なる建設業の現状を踏まえ、暑さ対策を単なる福利厚生ではなく、現場で働く一人ひとりの安全と業界の持続可能性を守るための「投資」として捉えるべきだ」と指摘している。

調査名称:「暑さ対策」に関する実態調査
実施主体:X Mile株式会社(クロスワーク)
期間  :2026年7月
方法  :インターネット調査
対象  :住宅の建設現場で作業・監督を行う487名

給与が同じなら半数以上が暑さの少ない仕事を選ぶ実態は、猛暑が事実上の「労働条件」になったことを意味する。ファン付き作業服や飲料の支給といった環境整備が広がったこと自体は前進だ。しかし現場が求めているのは、その先にある「暑さに耐えることへの正当な評価」である。月2万円の酷暑手当を掲げる求人が現れ始めた今、暑さにどう報いるかは、建設業各社の採用力と定着率を左右する経営判断になっていくだろう。