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Matterスマートホーム標準が本格始動 AppleとGoogleも対応を拡大

スマートホームの標準規格「Matter」が普及に向けて新たな段階に入った。2025年8月27日に、Connectivity Standards Alliance(CSA)は最新仕様「Matter 1.4.2」を公開し、通信の安定性や互換性の向上に取り組んだことを発表した。AppleやGoogle、Samsungなど主要プラットフォーマーも対応を進めており、さらにIKEAをはじめとするメーカーが新製品を投入することで市場拡大が加速しつつある。

Matterとは、異なるメーカーのスマートホーム機器を共通のプロトコルでつなぐことを目的とした国際標準規格である。CSAを中心に、Apple、Google、Amazon、Samsungなどが参画し、各社のエコシステムを横断して利用できる環境を構築することを狙う。従来、スマートホームはメーカーごとに仕様が異なり、ユーザーが複数のデバイスを併用する際に設定や連携が複雑化する課題があった。Matterはこの障壁を取り除き、シンプルで安全な接続を可能にするものとして注目されている。

最新のMatter 1.4.2では、Wi-FiやThreadを用いた接続の信頼性強化や、ルーターとの高度な連携機能、バッテリー節約やセキュリティ向上が実装された。これにより、ユーザーはより安定した環境でスマートホームを構築できるようになった。さらに、CSAの認証体制も強化され、Interop Labの試験結果が各社の「Works With」認定に直結する仕組みが整備されている。これにより、メーカーは従来よりも迅速かつ効率的に対応デバイスを市場投入できるようになった。

こうした流れを牽引しているのが、IKEAの積極的な取り組みである。同社は2026年1月以降に20種類以上のMatter対応製品を展開予定で、スマート電球やリモコン、センサーなどを投入する。ハブ製品「DIRIGERA」もMatterコントローラーおよびThreadボーダールーターとして機能し、他社製品との相互運用性を高める役割を担う見込みだ。IKEAはスマートホームの価格面とデザイン性を両立させ、より幅広い層のユーザーを取り込もうとしている。

また、IKEAはBluetoothスピーカーや照明一体型スピーカーなど、日常に溶け込むデザイン家電の領域にもMatter連携を拡大しており、家庭における体験価値の底上げを図る姿勢を示している。大手プラットフォーマーと家具メーカーの双方が連携を深めることで、スマートホーム市場はこれまでにない成長の局面を迎えている。

スマートホームはこれまで「未来の生活」を象徴する存在として語られてきたが、Matterの普及とともに、その実用化が現実のものとなりつつある。互換性の壁が取り払われ、より多くのユーザーにとって手軽に導入できる環境が整備されることで、スマートホームは生活の“当たり前”へと近づいているようだ。