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「構造で成長する組織」──CTF GROUPが切り拓く可能性

中小企業向けに、営業支援サービスを提供するCTF GROUPは、累計受注額20億円を超え、売上成長率も1700%を超える。「上場水準」の経営体制を整備しながら、2〜3年以内のIPOを目指している。代表の山本 真聖氏は、前職では上場を経験し、安定したキャリア・成長の道筋が見える環境にいたという。

独立を決断した当時を振り返って、以下のように話す。

「正直、恐怖心も葛藤もたくさんありました。特に大きかったのは『一度レールを外れること』への不安です。そこから抜け出すというのは、ある意味“保証のない世界”に飛び込むことでもありました。でもそれ以上に、“もっと本質的に経営を支援できるモデルをつくりたい”という気持ちの方が強かったんです。あのとき動かなかったら、たぶん何年経っても自分の中に“やりきっていない”という後悔が残ったと思います」

【プロフィール】
山本 真聖 (やまもと・まさと)CTF GROUP 代表取締役社長
大手営業支援会社にて、新規事業の立ち上げやインサイドセールスチームの構築、経営者向けのビジネスマッチングなどに従事。営業部門では年間約1,000人の経営者への提案営業を経験し、マネージャーとしてチームマネジメントと売上拡大にも貢献。2021年には同社の上場(当時の東証マザーズ)も経験。現場での支援を通じて、営業や人材確保に課題を抱える中小企業の多さと、既存の営業モデルの限界を実感。属人的な組織ではなく、誰もが成果を出せる“構造”の必要性を強く感じ、2022年に株式会社CTF GROUPを設立。

“営業”は企業の血流

山本氏が事業の核に営業支援を選んだ理由は明快だ。

「営業は、企業の“血流”だと考えています。どれだけ良いサービスや想いがあっても、届け方が間違っていたり、営業の仕組みがなければ、組織は成長できません。これまで数千社の中小企業と向き合う中で見えてきたのは、課題の多くが「営業できない」「人がいない」「回らない」に集約されるという現実だった。その“構造的な営業課題”を、仕組みでまるごと解決できれば、経営の根幹にインパクトを与えられる」と語る。

こうした中、生まれた独自の営業支援サービス「ZERO SALES」を主軸に大きく成長を遂げている。

「ZERO SALES」は、営業マンがいない・営業部がない企業でも、“人を雇わずに売上を上げる”ための仕組みを、CTF GROUPが構築・代行するサービスだ。営業戦略の立案からアプローチの実行までを一気通貫でサポートし、「人のチカラ」とテクノロジーを組み合わせて、効率的な見込み客の開拓や営業の仕組み化を支援する。

最大の特長は、全国に点在する在宅フリーランス人材を活用している点だ。200名以上が在籍しており、自宅からリモートで稼働。営業リストの作成、電話やメールでのアポイント取得、提案資料の作成、SNS活用まで幅広く対応。すべての業務が標準化・マニュアル化されており、未経験者でも一定の品質でアウトプットが可能とのことだ。

そして、CTF GROUPの営業担当と共に支援先の企業は商談に専念。例えば、受注率が8%程度である場合、13件〜15件程度の商談で1件の受注が獲得できる。13件の商談を獲得するためには、どれぐらいの数を営業すればいいのかなど、全て数字で徹底管理されており、効率的な体制となっている。

もっと働きたい在宅ワーカーにとっては仕事の獲得、支援先企業は商談の成立、CTF GROUPは自社の成長と雇用の創出と、まさに「三方良し」が生まれている。

『再現性』と『分業の設計力』

ここまで成長できたのは、『再現性』と『分業の設計力』にあると語る。

「ZERO SALES  では、属人的な営業ではなく、すべてのプロセスを型化・仕組み化し、未経験でも成果が出る営業モデルです。社員がやるべきこと/やらなくていいことを明確にし、在宅ワーカーなどのリソースを効率的に活用することで“回る体制”を作りました」

さらに「早くやるより『勝てる仕組みでやる』ことに集中したことで、初速は控えめでも結果的に“爆発的な安定成長”につながりました」と強調する。

創業期は山本氏自身がプレイングマネージャーとして現場に立つことも多かった。しかし今は「再現性のある考え方を仕組みとして渡す」マネジメントへと変化した。「“思考”そのものを型にして渡すことを重視しています。たとえば提案構成・商談設計・経営視点での判断などもテンプレート化して、誰もが再現できる形に変換しています」

また、人材については「“フルタイム=正社員”という価値観の崩壊」に注目する。

「CTF GROUPでは、正社員だけでなく、在宅ワーカーや副業人材など、『役割ベースで最適化された組織』をつくっています。これからは『どこにいるか』『何時間働いているか』よりも、『どの仕組みに、どの役割で参加しているか』が重要になる」と述べる。

上場は必要な通過点

CTF GROUPにとって上場はゴールではない。「上場はあくまで“手段”ですが、CTF GROUPが中小企業支援のインフラとしてより広く・深く社会に貢献していく上では、必要な通過点だと捉えています」

「すでにKPIや部門別収支、評価制度などは“上場水準”で設計しており、成長の再現性と組織の透明性を高めながら、2〜3年以内のIPOを見据えた準備を進めています」

上場によって「支援のスケール・信頼性・採用力が一段階上がる」とし、その先にある「社会的な役割」の実現を見据えている。

在宅ワーカー活用で「採用」を支援・BPO業務に注力

新たに、採用リソース、採用ノウハウがない企業にむけて、「ZERO RECRUIT」を開始。

「ZERO SALES」では「営業」を支援してきたが「採用」にもシリーズ展開する。

採用にはいくつかフェーズがあり、自社で完結できない場合は、それぞれ外注する必要があった。「ZERO RECRUIT」では、戦略設計から媒体選定、スカウト、選考フローの構築、面接代行まで、採用活動をプロフェッショナルが一気通貫でサポートする。

このサービスを支えるのも在宅ワーカーだ。人事経験者などでアサインされ、「誰を採用すべきか分からない」「求人を出したが応募が来ない」「採用業務に手が回らない」など、採用におけるあらゆる課題に向き合い、最適な採用体制を構築し、中小企業の「採用難」を解決する。

次世代へのメッセージ

最後に、若手起業家へのメッセージをこう語った。「あえて1つ挙げるとすれば、『人より、構造を信じろ』ということです」

「いい人を集めようとするのではなく、“いい人じゃなくても成果が出る構造”を作った方が圧倒的に早いです。そして、その構造を回せる人が後から育ってくる。人材頼みにならず、『仕組みで成長する組織』をつくれるかどうかが、結果としてリーダー自身を救うと思います」。

山本氏が築いた「構造で成長する組織」は、CTF GROUPの未来を形づくる原動力となっている。挑戦を重ねる同社と山本氏の歩みに、今後も期待が高まる。