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「素直最強、頑固最悪」——ココイチFC社長の諸沢氏が語る未来【ROOKIES BOOTCAMP 2025より】

2025年5月24日、キャリアSNS「YOUTRUST」が主催する新社会人向けイベント「ROOKIES BOOTCAMP 2025」が開催された。本イベントでは、全国に27店舗を展開する「カレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)」のフランチャイズ企業で、22歳という若さで社長に就任した諸沢氏が登壇。現在は、同社の現会長・西牧氏とともに、グループ全体を率いる「スカイスクレイパー」の運営に携わっている。登壇セッションでは、スカイスクレイパーという企業の展望、そして自身が社長として歩んできた挑戦と学びについて語った。

「冗談かと思いました」──社長就任の舞台裏

社長に抜擢されたとき、最初に浮かんだのは「本当に自分でいいのか?」という戸惑いだったという。会場では「冗談かと思いました」と笑いを交えて話しつつも、同時に「でも、心の底ではワクワクした」と率直な感情も明かした。その抜擢の背景にあったのは、能力や業績ではなく、“人物”としての共感性だったと西牧氏はいう。

会長・西牧氏が定義する「社長の条件」

同社の現会長・西牧氏は、過去にレストランのランチョンマットに「社長に必要な条件」を書き出したことがあるという。そこに記されていたのは、次のような言葉だった。

  • 素直であること
  • へこたれないこと
  • 愛があること
  • 見据える未来に共感できること
  • 現場を混乱させないこと

数値的な成果やカリスマ性ではなく、価値観と誠実さを重視するリーダー観が、諸沢氏の就任を後押しした。「社長業が得意な人は多い。でも、素直な人は少ない。社長として優秀な人は世の中にたくさんいます。でも、素直で信頼できる人は本当に少ない。だからこそ、自分たちは“逆のアプローチ”を選んだんです」と語る西牧氏の言葉は、今後の組織づくりの示唆に富んでいる。

社長としての日々と「変わらぬ姿勢」

諸沢氏自身は、「社長になって人生が変わった」と語る。実際は、わからないことの連続で、苦手意識に直面することも多かった。「こういうところが自分は苦手なんだな」と何度も痛感し、ときには自分の無力さに涙したこともあったという。それでも彼女が貫いてきたのは、「アルバイト時代と変わらぬ姿勢」だった。たとえ肩書が変わっても、年上の社員や経験豊富なスタッフと接するときは常に謙虚で、学ぶ姿勢を崩さない。その態度が、組織内の信頼関係を築く土台となっている。

会長との関係性と、リーダーとしての「あり方」

会長の西牧氏とは、現在も頻繁にやりとりを交わしているそうだ。「朝活お願いしまーす笑」と気軽に呼び出されるほどの関係は、互いの信頼とオープンなコミュニケーションによって築かれている。諸沢氏は「社長だからといって、特別に給料が高いわけではありません」と話す。その人間性こそが、周囲に「育てたくなる」と思わせる魅力につながっているのだろう。

西牧氏自身も、そんな諸沢氏に対して「教えることが楽しくてしょうがない」と語る。会長はあと2年で引退を予定しており、「もう口出しはしないつもり」と冗談めかして話す一方で、その“惜しみない支援”こそがリーダー育成の理想像であるといえる。

その姿は、特にマネージャーや次世代リーダー層の参加者に強い印象を残したはずだ。自らの感情や思いを率直に伝えるその在り方もまた、稀有なリーダー像である。

10年後のビジョン:ホールディングス化と100億円企業へ

最後に諸沢氏は、今後の展望として「2035年までに年商100億円を達成し、スカイスクレイパーをホールディングス体制へと成長させたい」と明言した。

それは単なる数字目標ではなく、「素直で、へこたれず、愛のある組織」を中核に据えた成長戦略である。会長の思いを受け継ぎ、自らのスタイルでリーダーシップを築くその姿に、参加者たちは深く心を動かされた。

「素直最強、頑固最悪」

諸沢氏がセッションの最後に掲げた言葉は、極めてシンプルで力強い。

「素直最強、頑固最悪——この言葉を胸に、これからも自分らしく邁進していきます。」その言葉に込められた誠実さと決意こそが、スカイスクレイパーという企業、そして新時代のリーダー像を象徴している。