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「わからない」が価値になる時代!東京藝大・京芸・愛芸の学長が語るアート×経営の未来

一般社団法人日本能率協会が、2025年3月3日(月)、The Okura Tokyoにてシンポジウム「アートが切り拓く経営の未来」を開催した。 日本企業の経営者をはじめ、東京藝術大学、京都市立芸術大学、愛知県立芸術大学の学長が登壇し、「アートと経営」について意見を交わした。

開会挨拶では、日本能率協会 会長の中村正己氏が登壇。「アートの持つ文化的創造性が、日本企業の経営の未来のヒントになる」と、アートの持つ可能性について言及した。

続くパネルディスカッションでは、東京藝術大学 学長の日比野克彦氏、京都市立芸術大学 学長の赤松玉女氏、愛知県立芸術大学 学長の白河宗利氏が登壇。さらに観光企画設計社 代表取締役の鈴木裕氏、竹中工務店 取締役執行役員副社長の菅順二氏も加わり、経営におけるアート実装の必要性や、アートを取り入れた都市空間の新潮流について見解を述べた。

東京藝術大学の日比野氏は、当大学の未来構想である「こころの産業」の創出について触れた。アートで処方的価値を生み出す「文化的処方」を発展・拡大させ、より社会のQOLを高めることで、心のゆとりやヒューマニティを取り戻し、ウェルビーイング(地域幸福度)の向上を図る取り組みであると説明した。

また京都市立芸術大学の赤松氏は、ビジネスとアートの違いに着目し、「ビジネスは『わかりやすいもの、即効性のあるもの』、アートは『何だかわからないもの、未来的に価値があるもの』」と表現した。 アートには「わからない」ことを受け入れる力があり、すべてのものに答えを求められる現代において、大切な存在となると強調。教育の場でも、数値で評価できる授業が増えている中、当大学ではアートを通じて個性を伸ばす教育を重視していると述べた。

愛知県立芸術大学の白河氏は、研究にのみ邁進している人よりも、何らかの芸術に携わっている人がノーベル賞を受賞しているとこれまでの歴史を振り返り、0→1を作り出せる人の価値について語りました。

さらに、ホテル専門の設計会社である観光企画設計社の鈴木氏は、「時代はウェルビーイングである」と指摘。ホテルを建設する際は、その地域の食文化や立地に合わせた部屋づくりを行い、飾るアート作品も現地アーティストの作品にこだわるなど、地域に根差した設計を心がけていると語った。

ディスカッションの中では、日比野氏が提唱する「こころの産業」に焦点が当てられた。東京藝術大学では、個人に適したアートを提供し、アートと人をつなぐ文化リンクワーカーの育成を進めているという。この文化リンクワーカーの取り組みが、「こころの産業」とも深く関わると述べた。

赤松氏も「建物と同様、アートは公共性を帯びている」と日比野克彦の意見に賛同。さらに、アートは感想をシェアできるからこそ発展していくものであり、誰もが触れ、楽しめるものであるべきだと自身の見解を示した。

日本能率協会は、5芸大と連携したアート活動を取り入れた研修プログラムを発表。日本企業は、アート(創造性と主観)、クラフト(経験と実践)、サイエンス(分析とデータ)の3分野を軸に成長する必要があるとの考えを示した。さらに、当協会が「アート」と「経営」の結節点となり、価値創出やイノベーションを促進していく意向を明らかにした。

実際に企業が大学へ訪れて研修を実施するなど、5芸大との連携を活かし、よりアートを学べる機会を提供していくという。

■公式HP
https://www.jma.or.jp