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Forbes JAPAN Xtrepreneur AWARD 2026、6つの共創プロジェクトを表彰

『Forbes JAPAN』は企業が培ってきたレガシー(資産)を掛け合わせ、社会課題の解決に挑む共創プロジェクトを表彰する「Forbes JAPAN Xtrepreneur AWARD 2026」の授賞式を開催した。

6つの部門賞が発表され、その中から選ばれたグランプリには、ミライズウェルメディカルグループ、MEDiDENT、日南の3社による「『失敗できる患者』を実装する、日本発・次世代医療支援/教育プラットフォーム」が輝いた。

医療、食、モビリティ、エネルギー、製造など、分野の異なる企業が手を組み、一社では届かなかった社会課題に挑む。その実装力が評価された一夜となった。

Forbes JAPAN Xtrepreneur AWARD 特設サイト:https://forbesjapan.com/feat/xtrepreneur_award/

一社では実現できない社会価値を生む「Xtrepreneur」

「Xtrepreneur(クロストレプレナー)」とは、複数の企業がクロス(共創)してプロジェクトを遂行する、起業家精神を持ったプレイヤーたちの呼称だ。既存の資産(レガシー)をオープンに接続し、新たな価値を生み出すことで、複雑化する社会課題の解決を目指す。

本アワードは、共創ビジネスの創出推進をめざすNTTドコモビジネスの事業共創エコシステム「OPEN HUB for Plural Futures」とForbes JAPANが、2023年に開始した取り組みだ。

4回目を迎える2026年は、経済産業省の後援のもとで開催された。

選出の対象となるのは、業界を超えた2社以上がアセットを持ち寄り、社会課題へインパクトをもたらすプロジェクト。加えて日本独自かつ、世界に発信できることが条件となる。

選出基準として掲げられたのは次の3点。

・日本発・グローバル:世界にイニシアチブを取るポテンシャルがあるか

・インパクト:社会課題/世の中全体に向け大きな影響をもたらすことができるか

・意外性:発想をゆさぶられるようなアセット・レガシーの組み合わせがあるか

「意外性」という基準が明示されている点が、このアワードの性格をよく表している。求められているのは単なる業務提携ではなく、業界の常識からは出てこない組み合わせだ。

審査は2026年4月16日から5月29日までの応募期間を経て、全国から集まった53件のエントリーから編集部が22件をノミネートとして選出。7月30日に一次審査通過が発表され、最終審査会を経て、8月26日の授賞式で6つの受賞プロジェクトとグランプリが確定した。

「企業版わらしべ長者」、主催者が振り返る4年

授賞式の冒頭、主催者を代表して登壇したForbes JAPAN編集長の藤吉雅春氏は、アワードを始めた当時をこう振り返った。事業共創をテーマにしたアワードを手がけた経験がなく、暗中模索の状態だった。そこで、すでに事業共創に取り組んでいたNTTドコモビジネスの「OPEN HUB」に胸を借りる形で立ち上げたのだという。

3回の開催を経て、受賞者たちの話を聞くうちに藤吉氏がたどり着いた表現が「企業版わらしべ長者」だ。出会いが新たな価値を生み、小さな力が出会いを重ねることで大きくなっていく。ただし、そのゴールに置かれているのは社会課題の解決である。

もっとも、わらしべ長者との違いもある。藤吉氏が挙げたのは、出会いが単なる幸運ではないという点だ。

「取材していてこちらがヒヤヒヤするぐらい、喧嘩をされているのではないかというようなことがある」

その衝突のような状態を乗り越えたところで、思わぬ社内のキーマンが現れ、人知を超える価値が生まれていく。そうしたプロセスを何度も目にしてきたという。

もうひとつ挙げたのが、応募企業の顔ぶれだ。回を重ねるごとに全国から応募が集まり、大企業からのエントリーも増えた。同時に、地方にカッティングエッジな企業がこれほど多いのかと毎回思い知らされるという。その両者が「面白いぐらいに出会う」ことが、このアワードの醍醐味だと語る。

グランプリ|医療教育の”ぶっつけ本番”を変える「3D-Clone」

グランプリに選ばれたのは、メドテック賞を受賞したプロジェクトだ。患者の個別データから生成した高精度3Dクローンモデルを活用し、外科教育・手術支援・患者説明を横断的に支援する医療プラットフォーム事業だ。共創したのは、〈医療〉ミライズウェルメディカルグループ(東京・港区)、〈医療〉MEDiDENT(東京・港区)、〈精密機器・製造〉日南(神奈川・綾瀬市)の3社である。

出発点にあるのは、医療教育が抱える構造的な課題だ。手術は失敗が許されない。しかし高度医療領域ほど、若手医療従事者が実際の患者に近い形で反復学習できる機会は限られ、熟練医師の暗黙知に依存する構造が強く残る。画面上のシミュレーションや座学だけでは限界があり、最終的には実際の患者を相手にした”ぶっつけ本番”にならざるを得ない。

そこでプロジェクトが重視したのが「触る」という感覚だった。患者ごとのCT・MRI・口腔内/顔面スキャン・表層データを統合し、歯、骨、歯茎、舌、皮膚までを高精度に再現した3Dクローンモデル「3D-Clone」を開発。メスを入れると出血する仕組みになっており、実際の手術時の緊張感まで再現されている。何度も失敗しながら繰り返し学べるリアルな人体模型として、臨床現場に実装した。

矯正歯科や顎変形症治療を展開するミライズウェルメディカルグループ、同グループで医療DX事業を手がけるMEDiDENT、そして自動車・工業製品の精密プロトタイピング技術を長年培ってきた日南。臨床現場のニーズと知見に日南のデザインおよびエンジニアリング技術を掛け合わせることで、実用化にこぎ着けた。すでに米スタンフォード大学をはじめ、海外の大学・医療機関からも関心が寄せられている。

MEDiDENT代表取締役CEOの富田 大介氏は、3D-Cloneが自身の臨床と教育の現場で感じ続けてきた課題から生まれたと明かす。

エクステンデッドリアリティ(XR)を使ったシミュレーションにも取り組んできたが、医療従事者が実技を身につけるうえで最後に効いてくるのは「触る」という感覚だった。そこから「本当にリアルな患者、失敗できる患者を作ろう」という発想が浮かんだのが原点だという。

ただ、医療側の技術だけでリアルな人体を再現することは難しかった。臨床知見と、世界トップレベルの技術を持つ日南が組んだことで実装にたどり着いたと振り返り、「共創という意味で、本当にいい出会いがあった」と語った。

この技術は医療教育にとどまらず、患者一人ひとりへの高度で安全性の高い医療につながると信じているとし、受賞を出発点に日本発の医療教育を世界へ発信していきたいと述べた。

日南で取締役デザイン&エンジニアリング統括本部長を務める猿渡 義市氏は、最初に相談を受けたときの正直な感想をこう明かした。「本当にそんなものができるかな、とちょっと思いました。しかし、我々ものづくりのプロフェッショナル魂にスイッチが入ってしまいました」

日南のポリシーは「思いを形にする」こと。社会に必要とされていながら、まだ形のないものを形にするのがミッションだと語る。富田氏の要求水準は非常に高かったが、デザインとエンジニアリングの技術を総動員して実現したのが3Dクローンモデルだったという。カルチャーの異なる異業種が本気でタッグを組んだ結果が評価されたことへの喜びを述べた。

ミライズウェルメディカルグループ統括本部長の富田由美子氏は、医療の提供と若手医療従事者の育成を担う立場から、プロジェクトの本質的な目的を語った。

模型を精巧に作ること自体はゴールではない。医療従事者が何度失敗しても繰り返し学べる環境をつくること、そしてその先にいる患者や家族が、これから受ける医療を理解し安心できること。そこに意味があるとしたうえで、この共創を一度きりで終わらせず、国内、さらに世界へ広げていきたいと結んだ。

リジェネレーション賞|廃棄物を炭化し、素材として循環させる

プロジェクト名:.Garbon(ガーボン)

Gab × 大木工藝 × 共和ライフテクノ × オカムラ

リサイクル困難な産業廃棄物を独自の特許技術で炭化し、人工皮革や建材、顔料・塗料といった新素材へ配合する新循環ソリューション。高付加価値素材として販売することで処理費用を相殺し、企業にとって「コスト」だった廃棄物を「プロフィット」へ転換する発想と実装力が評価された。

フードイノベーション賞|トリガイで「世界の海の畜産革命」を

プロジェクト名:チキンクラム〜トリガイの種苗生産で「世界の海の畜産革命」を起こす

チキンクラム × 宮城県漁業協同組合 女川町支所 × 宮城県女川町

世界の温室効果ガス排出量の約14.5%を畜産が占める一方、農業用地の約8割が家畜飼料の生産に費やされながら、人間が肉から得るカロリーはわずか16%にとどまる。日本固有種トリガイは可食部の重量増加が世界の主要二枚貝で最速とされ、1年で60gに達する。2024年夏、チキンクラムが民間として初めて人工種苗生産技術の確立に成功した。

 セーフモビリティ賞|AIで乱気流を予測し、航空安全を高める

プロジェクト名:AIによる乱気流予測で航空安全を高める産学連携プロジェクト

BlueWX × ANAホールディングス・全日本空輸 × 慶應義塾大学

2019年に始まったANAホールディングスと慶應義塾大学の共同研究を起点に、2023年7月に大学発ベンチャーとしてBlueWXが設立された。過去10年以上にわたる数万件のパイロットの揺れ報告を深層学習させ、日本上空における予測モデルで86%の正答率を実現。実運航への導入と海外販売がすでに始まっている。

 エネルギーソリューション賞|衛星データとAIで蓄電所の用地を探す

プロジェクト名:衛星データ×AIで蓄電所用地開発を支援するDeal Techプロジェクト

WHERE × パワーエックス

再生可能エネルギーの導入拡大に伴い大規模蓄電設備の重要性が高まる一方、蓄電所開発には送電線への近接性、平坦地、面積、地盤条件、系統接続、権利関係など多くの要件があり、用地パイプラインの構築が課題となっている。再エネ普及のボトルネックである用地確保という足元の課題に切り込んだ実用性が評価された。

デジタルクラフツマンシップ賞|計算解析と匠の技で次世代の自動車構造を

プロジェクト名:計算解析と熟練加工技術による次世代自動車構造の共創

Nature Architects × 浅野

最先端の計算解析技術と熟練の金属加工技術を融合し、従来の設計限界を超える衝撃吸収構造を共同開発。現場の知見を開発初期のデジタル設計に反映させることで、設計・試作・量産を一気通貫でつなぐ「循環型開発プロセス」を生み出した。

「課題が見つからない国」で、なぜ共創が生まれるのか

授賞式の最後には、審査員を務めたForbes JAPAN Web編集長の谷本有香氏が全体を総括した。

谷本氏はまず、回を重ねるごとに審査員の目が厳しくなっていると明かす。

「前年より社会にインパクトのあるものを」とそうした基準で臨んだ今回、どのプロジェクトがグランプリに輝いてもおかしくない審査だったと振り返った。後援する経済産業省の関連プロジェクトが受賞を逃した点にも触れ、忖度なく選んだ証明になったのではないかと述べた。

そのうえで谷本氏が紹介したのが、当日の朝にニューヨークの起業家と交わしたという会話だ。その起業家いわく、日本は街が美しく、人々は豊かで優しく、倫理観が高い。秩序も整っている。だからこそ課題が見つかりにくく、起業家が生まれにくいのではないか。

一方で日本は、ハーバード大学が公表する経済複雑性指標で1995年以降トップを維持し続けている国でもある。課題先進国と呼ばれて久しい。

この一見矛盾する評価に対して、谷本氏は受賞プロジェクトの中に答えを見出す。

「自分の目の前にある課題、もっとこうしたいと思うことを、一社ではできない取り組みとして多くの人と力を合わせる。共創することで、結果的に大きな社会的インパクトを起こしていく。これが日本ならではのイノベーションの発露の仕方ではないか」

不確実性と複雑性が高い環境だからこそ、一人ひとりが当事者として、主役として目の前の課題に取り組み、手を携えていく。それが日本の新しい豊かさの形をつくると谷本氏は語り、アワードがその先導役でありたいとした。

6つのプロジェクトに共通するのは、単独では越えられなかった壁を、異なる領域のアセットを持ち込むことで突破している点だ。

医療の課題意識に工業のプロトタイピング技術を、水産養殖に自治体の連携を、航空会社の運航データに大学の研究力とスタートアップの実装力を。組み合わせの「意外性」は、課題の側から必要なピースを探した結果として生まれている。

日本発の共創モデルがどこまで世界へ届くのか、受賞企業の次の一手が問われる。