廃棄物処理や資源リサイクル事業を手がけるTREホールディングスは、2024年の中期経営計画で掲げた「WX(Waste Transformation)」を推進している。
これは単なる廃棄物処理やリサイクルの延長ではない。廃棄物処理の技術的、採算的課題の克服により、動脈産業(製造側)と静脈産業(リサイクル側)が共創する未来像を描いている。
TREホールディングスが開催した説明会では、「WX」の意義と進捗、そして具体化が進む取り組みについて言及した。同社がいま何を目指し、どのような壁を乗り越えようとしているのかが明らかになった。

■ 長期ビジョン「WX環境企業への挑戦」のもと、売上3000億円を目指す
冒頭に登壇したのは、TREホールディングス代表の阿部光男氏である。TREホールディングスは、廃棄物処理および再資源化を主力事業として、建設系廃棄物処理、家電や自動車のリサイクル、バイオマスエネルギーといった領域に加えて、環境コンサルティングなど多角的に事業を展開してきた。

その上で、今後の事業の方向性について具体的に言及した。まず、現在の産業廃棄物処理事業に加え、今後は一般廃棄物のリサイクルにも注力していく方針を示した。事業活動に伴って発生する産業廃棄物だけでなく、家庭から排出される一般廃棄物についても循環の仕組みを強化していく考えである。
さらに、林業分野への取り組み強化についても説明した。近年、山火事の増加や森林の手入れ不足が社会課題となる中、森林整備にはビジネス機会があるとの認識を示した。グループ内には林業に従事する人材がおり、森林整備を進めることで山をきれいにし、水源の保全や資源活用にもつなげていく考えだ。
その延長線上で、森林資源からグリーンメタノールを製造する構想にも触れた。木材由来のメタノールが生産できれば、船舶燃料としての活用が可能となるほか、医療用途や化粧品原料など多用途への展開も想定される。
また、能登半島地震の復興支援についても言及した。復旧作業の完了後も現地に会社を設立し、発電事業や養殖事業などを通じて雇用を生み出す取り組みを進めていることを明らかにした。単に廃棄物処理を行うのではなく、地域の再生に資する事業展開を行っていく。
「WX」については、「WX環境企業」としての地位を確立し、現在の売上規模からさらに成長を図り、将来的に3000億円規模の企業を目指すと述べた。企業規模を拡大することで、より一層日本や地域社会への貢献を強めていく考えだ。

■ 動脈×静脈の共創へ TREの中核企業「リバー」が参画する自動車の水平リサイクル
TREホールディングス 経営企画本部 IR広報部 部長の齋藤哲雄氏は、「WX」が高度循環型社会と脱炭素化を同時に進める取り組みであることをあらためて説明した。廃棄物を単に処理するのではなく、循環資源へと転換していくという発想がその中核にある。

従来、製造を担う動脈産業と、解体・リソーシングを担う静脈産業は、それぞれの役割を担ってきた。「WX」は、これらの枠組みを超えた共創を掲げている。
これらTREホールディングスの掲げる「WX」の取り組みを受け、グループの中核企業である「リバー」が、幹事機関の1社として参画するのが、自動車に使われた材料が再び自動車に活用される「Car to Car」の実現を目指す取り組み「BlueRebirth」である。
自動車の水平リサイクルを目指す取り組み「BlueRebirth」の具体的な取り組みについて、リバー株式会社 事業本部事業統括部 サーキュラーエコノミー課長 平野 幹尚氏が現在の状況を説明した。

「BlueRebirth」は、日本の基幹産業である自動車産業における資源循環を目的とし、動脈産業と静脈産業が融合したバリューチェーンの構築を目指している。狙いは、自動車に使用された材料を再び自動車に活用する水平リサイクルの実現である。
現状の課題としては、再生材の品質、不純物の混入、経済性など複数の要素が挙げられた。これらが十分に両立しなければ、自動車部材としての再利用は容易ではないという。「品質」「コスト」「量(物量)」のバランスが重要で、再生材の品質を高めようとすれば工程は複雑になりコストが上昇する。一方で、十分な物量が確保できなければ安定供給は難しく、結果として市場が形成されない。
品質、コスト、物流はそれぞれ独立した要素ではなく、密接に関係している。これらの要素が適切にかみ合ったときに初めて、高品質なリサイクルが成立するとし、単に技術だけでなく、供給体制や需要側の受け入れ環境も含めた全体設計が重要になるとの認識を示した。
その解決策の一つとして紹介されたのが、自動精緻解体と呼ばれるロボット技術の開発である。解体工程を高度化することで、より高品質な素材の抽出を目指す取り組みが進められている。また、動脈企業と静脈企業が同じ場で議論を重ねている点も強調された。素材の循環利用を前提とした設計や仕組みづくりは、単独企業ではなく、産業横断的な連携の中で進める必要があるとした。
■「WX」の可能性
TREホールディングスの目指す「WX」は、単なる“廃棄物処理の効率化”ではない。廃棄物を資源に変えるための技術革新と、企業・産官学の共創を通じた産業構造の再編を意味する。阿部氏が示した長期ビジョンは、従来の静脈産業を動脈産業と融合させることで、廃棄物が“始まり”になる未来を描くものだ。
また、TREグループの中核企業「リバー」が参画する「BlueRebirth」が目指す、自動車の平リサイクルにおいて、欧州では2021年のELV指令によって、再生材使用が義務化されつつあり、自動車部材に一定割合以上の再生資源を含めることが求められる。日本でも同様の動きが進もうとしており、素材の循環利用は企業にとって経済安全保障の課題にもなりつつある。
これからの数年で、「WX」がどのように社会実装され、「BlueRebirth」の取り組みが現実の循環モデルとして機能するのか。そのプロセスこそが、環境・資源循環ビジネスの新たな潮流を示すことになるだろう。
