米国が対日関税を15%に引き上げ──日米の通商関係に新たな緊張感

2025年7月31日に、アメリカのトランプ大統領は対日輸入品に対する相互関税率を15%へ引き上げる大統領令に署名した。この措置は、米東部時間8月7日午前0時1分以降に通関される日本からの貨物に適用され、即日発効となる。対象となるのは、自動車部品や電機製品、農産物など幅広いカテゴリーに及ぶとされている。
日本政府は、今回の関税引き上げに関して事前の協議を強く求めてきたが、米側は「相互主義」の原則に基づき、一方的な措置を断行した格好だ。日本側も対抗措置の実施を示唆しており、貿易面での緊張が再燃する可能性が高まっている。
今回の措置について米通商代表部(USTR)は、円安を背景にした日本製品の競争優位性や、一部産業分野における関税障壁の非対称性を是正する目的があると説明している。一方で、複数の米国内業界団体は、今回の関税引き上げがサプライチェーンの混乱を招き、米国企業にも打撃を与えると警鐘を鳴らしている。
日本企業への影響も避けられない見通しだ。特に、米国向け輸出比率の高い製造業や農業関連企業では、収益構造の見直しや生産体制の再構築を迫られる可能性がある。加えて、今後の為替動向や日本政府の対応次第では、投資家のセンチメントにも波及しかねない。
これまで日米両国は、TPP脱退後も二国間協議やFTA(自由貿易協定)交渉などを通じて一定の関係維持に努めてきた。しかし、トランプ政権下では「米国第一主義」が再び色濃くなっており、国際通商の枠組みよりも国内産業保護を優先する姿勢が明確になりつつある。
経済産業省は本件に対し、「極めて遺憾」とする声明を発表するとともに、WTOルールに則った対応を検討しているとコメント。今後は、WTO紛争解決手続きの活用や、G7など多国間枠組みでの対話を通じて解決を模索する動きが予想される。
日米は世界経済を牽引する主要国同士であり、その通商関係の在り方は国際社会に与える影響も大きい。経済安全保障やサプライチェーン再構築が喫緊の課題となる中、今回の関税措置がもたらす影響と今後の展開が、注視される局面に入っている。
