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M&Aが活況 EXIT戦略と成長戦略の多様化が課題に

スタートアップを取り巻く資金調達環境が変化する中で、M&A(合併・買収)を中心としたEXIT戦略が再び脚光を浴びている。2025年に入り、国内外で大型M&Aの件数が増加傾向にあり、IPO(新規上場)一辺倒だった出口戦略に、より多様な選択肢が求められるようになってきた。

これまでEXITといえば、IPOが最も一般的な成功の象徴とされてきた。しかし、上場後の企業経営にかかる負担や、成長期待に対する市場のプレッシャーから、M&Aによる売却や事業統合といった選択肢が現実的な「成長の出口」として認識され始めている。特に、国内市場の成長鈍化やグローバル展開の加速を背景に、海外企業による買収や業界再編型のM&Aも活発化。ベンチャーキャピタル(VC)にとっても、複数のEXIT手段を想定したポートフォリオ構築が不可欠となっている

近年では、大企業側にとってもM&Aは単なる投資回収手段ではなく、成長戦略の中核に据えられている。既存事業とのシナジーを狙った買収や、先端技術・新興市場へのアクセス手段として、スタートアップとの協業や統合を進める動きが加速している。たとえば、国内の大手通信企業や総合商社、製造業などがスタートアップとの資本提携や完全子会社化を進めており、従来の「垂直統合型」の買収に加え、DXやサステナビリティを見据えた「戦略的買収」がトレンドとなっている。

一方で、EXIT手段の多様化はスタートアップにとって新たな課題も生んでいる。特に、設立初期からEXIT像を曖昧にしたまま事業を推進した結果、M&Aの交渉過程でビジョンの不一致が顕在化したり、買収後のPMI(統合プロセス)で組織カルチャーの摩擦が生じたりする事例も増加している。スタートアップ経営者にとっては、単に「EXITする」ことではなく、いかに自社の価値やチームを次世代につなぐかという“設計された出口戦略”が重要な経営テーマとなっている。

スタートアップにとって、M&Aは終わりではなく、事業やチームが次なるステージに進むための選択肢の一つだ。その可能性を最大化するためにも、戦略的視点での成長設計と、多様なステークホルダーとの関係構築がこれまで以上に求められている。