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GAFAMの決算に見るAI戦略の現在地

2025年7月下旬に出揃ったGAFAM(Google・Apple・Facebook(Meta)・Amazon・Microsoft)の2025年4〜6月期決算は、AI戦略と国際経済リスクの影響を色濃く反映した内容となった。とくに注目されたのは、生成AIの商用展開と、それに伴うクラウド収益の伸長、そして米中間の貿易摩擦によるコスト圧力である。

中でもMicrosoftは、OpenAIとの連携を軸に生成AI関連の収益が好調に推移。Azure部門では前年同期比で26%増を記録し、企業顧客による「Copilot for Microsoft 365」導入が着実に進んでいるという。一方、Google(Alphabet)もAI研究投資が実を結びつつあり、クラウド部門の黒字転換が継続している。Geminiの検索連携やVertex AIによる法人契約が堅調に推移した。

MetaもAI強化に動き、広告配信の精度向上が業績に貢献した。特にInstagramとReelsの収益化は好調で、若年層のエンゲージメント維持に一定の成果を見せている。しかし、メタバース部門「Reality Labs」は依然として赤字が続き、戦略の焦点がやや曖昧な印象を与えた。

一方で、AppleとAmazonは生成AIという文脈ではやや出遅れが目立つ。AppleはiPhone販売の伸び悩みと中国市場の需要減退により、増収ペースが鈍化。AIに関しても、年内発表予定の「Apple Intelligence」搭載デバイスへの期待が先行する状況にとどまっている。

AmazonはAWSの成長が鈍化傾向にある中で、AIによる業務効率化や新規API提供の収益貢献が限定的。むしろ北米における物販事業が堅調で、AI以外の事業基盤に支えられた形となった。

今回の決算では、生成AIを“プロダクト化”し収益につなげる力が、企業間の明暗を分け始めていることが明確になった。特にMicrosoftとGoogleは、既存ソリューションへのAI統合に成功しており、企業顧客との接点強化に寄与している。

一方で、AppleやAmazonのように、AIを中核戦略に据えきれていない企業は、プラットフォームの競争力において後れを取る可能性も指摘され始めている。

AI時代の覇権をめぐるレースは、単なる研究開発力ではなく「商用化とユーザーへの浸透力」で競われる段階に突入した。今後のアップデートや発表において、どの企業が持続的な競争優位を築くのか。次の四半期決算は、その答えをより鮮明にすることになりそうだ。