「社会課題の解決こそビジネスチャンス」サービス開始1年で2,000人のママが活用する「ママアイ」誕生秘話-ユニークピース代表・池本博則氏

働き手の確保、人材不足解消は、どの企業も抱える問題だ。日本の労働市場は深刻な人手不足に直面しており、経済成長を阻害する重大な要因となっている。国、企業はあらゆる対策を検討しているが、その一つとして「女性の活用」が重要となっている。

株式会社ユニークピース代表取締役・池本博則氏は、働きたいママ向けのキャリア支援プラットフォーム「ママアイ」を2023年に立ち上げた。「ママアイ」は、ママがライフスタイルやキャリアに合わせて自由に働き方を選べる仕組みを提供し、育児と仕事の両立を支援するサービスだ。時短で働きたい、これまでよりもキャリアアップを目指したいなど、一口に「働きたい」といってもママによってその要望は様々だ。「ママアイ」は、単なる求人サイトではなく、ママに寄り添ったサービスとして、1年で2,000人の会員数を突破している。

本インタビューでは、池本氏のキャリア、「ママアイ」立ち上げの経緯、サービスの具体的な内容や課題、そして今後の展望について詳しく伺った。

マイナビで培った「社会課題の解決」がきっかけで「ママアイ」誕生
池本氏は、前職のマイナビで地方創生に特化した事業「マイナビ農業」を立ち上げた経験を持つ。当時、農業分野はビジネスチャンスが見えづらい難しい領域だったが、あえてそのような市場に挑戦し、ビジネスとして成立させた。この経験から、池本氏は「社会課題にこそビジネスの可能性が眠っている」という考えを持つようになったという。

2020年、池本氏は株式会社ユニークピースを設立し、「社会課題を解決しながらビジネスとして成立させる」という理念のもと、これまでの経験から、自治体支援、企業のコンサルティングなどを行っていた。こうした中、2023年に「ママアイ」を立ち上げることになる。実は「ママアイ」の構想は、起業前からあり、わずか半年でサービスの枠組みを整えた。池本氏は「事業はやりながら作り上げるもの」と考え、スピード感を重視してサービスを立ち上げた。「ママの働き方」に注目したのは、マイナビ時代、育休・産休から復帰したママ社員たちが限られた時間の中で「驚くほどの高いパフォーマンスを発揮する姿」を目の当たりにし、「ママの能力や可能性」に強い関心を抱いたからだという。「ママたちは働き方に制約があっても、その経験やスキル、能力には大きな価値がある」と池本氏は感じ、「彼女たちの可能性を引き出し、社会に還元する仕組みを作りたい。それがママたちの働き先の創出、企業の人材不足解消にもつながる」と考えた。

 「ママアイ」とは
「ママアイ」は、ママ自身が主体的にキャリアを選び、自分らしく働く ことを支援するサービスだ。3つの柱を軸に、ママたちの多様なニーズに応える。求人サイトは数多くあれど、最大の違いは「仕事の選択肢を広げる視点」だという。ママ向けサービスは事務作業やオンラインでの簡単なOC業務といったサポート業務の求人が多い。しかし、「ママアイ」は仕事を限定せず、ママの能力や可能性に合わせて幅広い案件を紹介する点で差別化を図っている。正社員に復帰したい方、面白い案件を担当したい方、まずはオンラインで仕事を再開したい方など、どんな方でも対応できる仕組みが整っている。

「ママが持つ能力や価値に応じた仕事を提供し、ママ自身が自分のキャリアを選択できることがママアイの最大の強み」だと、池本氏は話す。こうしたサービスの背景には、ユニークピース社の女性社員、池本氏の奥様の声が大きいそうだ。「ママ=時短でただ働きたいというわけではなく、結婚・出産前よりもキャリア形成・自己実現をしたいという方も多い」という声が反映されている。

ママアイ リ・キャリア
もう一度社会復帰やキャリアアップを目指すママたちに対して、仕事の転機を支援するだけの人材ビジネスではなく、企業が求める必要人材の提供による“企業の事業支援”と、事業への貢献を通した“女性のキャリアアップ”の両立を目指した人材紹介サービス。業務委託から、総合職、などさまざまな契約形態の採用をワンストップで提供する。「バリバリ働きたい」という意欲のあるママに対して、企業とのマッチングを行う。

ママアイ フレックス
企業や官公庁、企業におけるプロジェクト案件、BPO(より広範な業務プロセスの委託形態)/RPO(人材採用プロセスに特化した委託形態)プロジェクト型の支援サービス。

自治体などの案件に入り、チームメンバーとして業務に取り組む仕組み。プロジェクトごとにアサインされることから、自分に合う仕事を選べるだけでなく、自治体をはじめ様々なプロジェクトが揃っていることは、ママアイならではだ。

ママアイ タスク
オンラインで自分の能力やスキルをタスク特化で発揮できる業務代行サービス。専門的なスキルや経験を持つママが、時間的制約の中でも力を発揮できる案件を提供。「在宅で専門性を活かした仕事をしたい」というママに向けたサービス。

こうしたサービスを立ち上げ、求人を増やしていった結果、約1年で2000人のママが登録している。口コミでの広がりが大きく、「ママアイ」で働き始めた方が友人・知人にサービスを紹介することから自然に登録者が増えているそうだ。利用者からは、以下のような声もある。「在宅で働けるようになり、子育てとの両立が楽になった」「地方に住みながら、全国の仲間と一緒に働けることが新鮮で嬉しい」「自分のスキルや経験を活かせる仕事が見つかり、自信を持って働けるようになった」

 今後の展望と新たな挑戦
「登録者数の拡大よりも、一人ひとりの満足度を高めることが大切」と池本氏は語り、今後は企業との連携強化や案件の多様化に注力する方針だ。企業の多くは「フルタイム正社員」を求めており、時間の制約があるママの働き方への理解が不十分な場合が多いためまだまだ道半ば。ママ人材の有用性を啓蒙していく必要がある。さらに、ありがたいことに、供給が不足しており、ママたちのスキルや希望に合った仕事を増やすことが必要で、求人・プロジェクトの種類を増やす必要がある。特に自治体などの案件は地道に増やしていくしかなく、販路開拓は急務だ。

次なる社会課題解決とは
マイナビ時代の「農業・地方創生」、現在進めている「ママ人材」という課題の次に将来的に見据えてる課題を聞いた。池本氏は次に「40代・50代の親父世代」に向けた新しいソリューションを構想している。「定年やキャリアの壁に直面し、活躍の場を失いつつある親父世代を元気にし、輝ける場を提供するサービスを提供したい」と話す。「ママアイ」から始まった挑戦は、世代や性別を超えて社会全体の課題解決へと広がろうとしている。池本氏は今後も「社会の課題」に目を向け、ビジネスの力で解決していく姿勢を示していく。「ママのキャリア支援」を起点に、ユニークピースは新しい社会価値を創出し続けていくだろう。

初の著書も出版
池本氏初の著書『あなたの価値の育てかた』が2024年12月に出版される。
本書は、これから活躍したい若手社会人や起業家に向けて、自分の価値を高める方法を伝える内容だ。
池本氏自身の経験や「ママアイ」の成功事例も盛り込まれていて、池本氏の信念が詰まった一冊だ。