フォースタートアップスキャピタルが宇宙スタートアップ・岩谷技研に出資

2025年6月12日に、フォースタートアップスキャピタルは、北海道江別市を拠点とする宇宙関連スタートアップ・株式会社岩谷技研への出資を実施したと発表した。
岩谷技研は、「宇宙を身近にする」をミッションに掲げ、成層圏を活用した宇宙関連サービスの開発に取り組むディープテック系スタートアップ。中核となるのは、高高度ガス気球(HAB: High Altitude Balloon)と呼ばれる飛行体を用いた技術で、一般的な航空機の到達範囲を超える高度30km以上の成層圏をターゲットにしている。近年では、この気球を用いた有人宇宙遊覧カプセルの開発も進めており、世界的にも数少ない同領域の挑戦者として存在感を強めてきた。
具体的には、気密性の高いカプセルに搭乗者を収容し、ゆっくりと成層圏まで上昇させるという仕組みで、ジェット燃料やロケットエンジンを使用しないため、環境負荷が小さく、かつ安全性にも優れる点が特徴だ。観光用途だけでなく、地球観測・災害監視・気象研究などの学術利用、さらには将来的な宇宙インフラの構築への応用も視野に入れている。
今回の出資は、同社の成層圏有人飛行カプセル事業の社会実装に向けた体制強化、技術開発の加速、飛行頻度の拡大を支援する狙いがあるとみられる。フォースタートアップスキャピタルとしても、宇宙開発をはじめとするディープテック領域の支援を重視しており、岩谷技研がもつ独自技術と将来的な市場性に対して強い成長可能性を見込んでいるようだ。
宇宙関連ビジネスは、従来の国家主導型から民間主導型へとパラダイムシフトが進んでおり、近年ではSpaceXやBlue Originをはじめとする民間企業が、新たな産業構造を形成し始めている。こうした潮流は日本国内にも波及し、地方発の宇宙スタートアップが独自の技術で国際的な競争に挑む動きも見られるようになった。岩谷技研のように、既存の宇宙開発とは異なるアプローチで成層圏という「手の届く宇宙」を対象とする企業は、商業化における初期フェーズでのコストとリスクのバランスが取りやすく、新たな宇宙体験や研究フィールドとしての可能性が広がっている。
フォースタートアップスキャピタルの今回の出資を通じて、岩谷技研はさらなる開発体制の強化を進め、有人飛行サービスの提供に向けた実証の加速や、国内外のパートナー企業との連携拡大も視野に入れるとみられる。
宇宙を“遠い存在”ではなく、“実感できる体験”へと変えていく──岩谷技研の取り組みは、単なる技術革新にとどまらず、人類の宇宙観や地球との関わり方そのものをアップデートする可能性を秘めている。