「最近の社員は自分で考えない」「指示待ちばかりで主体性が感じられない」
多くの企業経営者や管理職が、こんな声を漏らすのを耳にすることがあります。実際、2023年の某調査では、「自分の職場で思考力を活かせている」と答えたビジネスパーソンはわずか15%に留まりました。この数字が示すのは、個人の能力の問題ではなく、職場環境の問題なのかもしれません。
「忙しい」社員たちの悲鳴
「何をどう改善したいのか」「何が問題の本質なのか」といった問いに、即座に答えられる人は驚くほど少ないものです。これは決して個々の社員が「考える力」を持っていないからではなく、「考える余裕がない」環境が原因である可能性が高いのです。日々の業務に忙殺され、目先の作業に追われる職場では、思考の余白を持つことは難しいといえます。
「作業」と「思考」は、時に相反する性質を持ちます。「思考」は大きなエネルギーを必要とし、時間と精神的な余裕がなければ成立しません。一方で、「作業」は明確な手順があり、思考の代わりに手を動かせば前に進む安心感を与えてくれます。このため、社員たちは無意識のうちに「とにかく目の前の作業をこなす」というスタイルに陥りがちです。
考える社員を生むための組織改革とは?
では、どうすれば社員の「考える力」を引き出すことができるのでしょうか?その第一歩は、組織として「作業者」を「思考者」へと変える仕組みを導入することです。具体的には、次の3つのアプローチが有効です。
1.考える時間の確保
忙しさの中で、社員が本質的な問題に向き合う時間を持つことは至難の業です。業務改善の一環として「ノンワーキングデイ」や「集中タイム」を設定し、作業ではなく考える時間を意図的に設けることが重要です。例えば、Googleでは「20%プロジェクト」として通常業務の20%を新しいアイデアの創出に使う文化が根付いています。
2.思考を評価する仕組み
多くの企業では、目に見える成果物や数値目標が評価基準となりがちです。しかし、思考のプロセスやアイデアそのものに対して評価を行うことが、社員のモチベーションを引き出す重要な鍵となります。「失敗してもいいから挑戦する」風土を作ることで、思考の活性化を促します。
3.目標とビジョンの共有
自分の仕事がどのように会社の目標やビジョンに繋がるのかが明確でないと、社員はただ業務をこなすだけになりがちです。リーダーシップを発揮し、部下に対して「なぜこの仕事が重要なのか」を伝えるコミュニケーションが必要です。
企業が発する無言のメッセージ
一方で、「自分で考える必要はないから、とにかく忙しそうに作業していてほしい」という暗黙のメッセージを発している企業も少なくありません。このようなメッセージが蔓延している職場では、社員は作業に没頭し、思考を避けることが「正しい行動」と認識されてしまいます。
しかし、これでは社員の成長が阻害され、組織全体としての競争力も低下します。AIが進化する現代において、人間にしかできない「創造的な思考」を促進する環境を整えることが、企業の持続可能性に直結するのです。
「考えない社員」を嘆く前に、まずは企業側が環境を見直すことが必要です。「考える時間と余裕を提供し、思考の結果を評価する文化」を整えることで、社員のやる気や成長を促進できます。結果として、個々の社員だけでなく、会社全体が「考えること」を当たり前とする風土を育てていくことができるでしょう。
あなたの会社では、社員が「考える余白」を持つために、どんな工夫ができるでしょうか?それを考える時間を持つことが、次の一歩になるかもしれません。