浅草地区で観光マナー啓発を推進、台東区が新たな取り組みを開始

今回の取り組みの中心には、「観光マナー啓発」が位置付けられている。スローガン「EDO IT!」を掲げ、江戸らしさを取り入れた啓発活動が展開される。このスローガンは、「DO IT!(やろう)」の呼びかけを江戸風にアレンジしたもの。浮世絵タッチのビジュアルを活用し、観光客への啓発を図る。

具体的な取り組みとして、観光マナー啓発リーフレットと持ち帰り用ごみ袋の配布が行われる。リーフレットは日本語、英語、中国語(繁体字・簡体字)、韓国語の4言語で作成され、イラストを活用してわかりやすく観光マナーを解説している。配布は浅草地区内の観光案内所や観光バス降車場、宿泊施設などで実施される。

また、江戸をテーマにしたコスチュームを纏った巡回スタッフが、移動式ごみ箱を持ちながら地区を巡回。観光客と記念撮影を楽しめる演出を交えつつ、ゴミのポイ捨て禁止や観光マナーの啓発を行う。この活動は1月下旬まで、昼と夕方の2回実施される予定だ。

この他、道路に投棄されたゴミの組成調査も行われる。ゴミの多い場所やその組成を明らかにすることで、ポイ捨て対策の基礎資料として活用される予定だ。

こうした取り組みの背景には、オーバーツーリズムが浅草地区にもたらす問題がある。観光客の急増は地域経済を活性化させる一方で、町の清掃負担の増大やゴミの不適切な投棄、観光施設や飲食店の混雑、住民の日常生活への影響といった課題を引き起こしている。特に浅草寺や仲見世周辺では、観光客によるポイ捨てや行列が歩行空間を圧迫する事例が増えており、地域の美観や住民の快適な生活環境が脅かされている。

こうした課題に対処するため、台東区は観光客への利便性向上策も併せて導入している。例えば、「トイレ」「公衆喫煙所」の場所を示すデジタルマップを公開した。このマップは二次元コードをスキャンすることで簡単にアクセス可能で、日本語、英語、中国語(繁体字・簡体字)、韓国語で表記されている。地域事業者の協力のもと、案内所や店舗に掲示され、観光客がスムーズに施設を利用できるよう工夫されている。

さらに、観光客による店頭行列の歩行妨害を解消するため、順番待ちシステムを試験導入している。このシステムは、番号案内を活用することで歩行空間の確保を目指し、令和7年3月までの期間限定で浅草地区の店舗で試験運用される。実験結果は地域の飲食店と共有され、システム普及の可能性が模索される。

これらの取り組みにより、台東区は観光客と地域住民がともに快適に過ごせる浅草地区の実現を目指している。江戸の伝統を活かしつつ、観光地としての魅力を保ちながら、持続可能な観光地づくりに向けた新たな一歩を踏み出している。